企業の競争力を考える時、どれだけ業務を効率化し、コストを下げられるかが重要であることは論を俟たない。欧米のIT企業では積極的にプロジェクトをアウトソーシングすることで競争力を向上させている。そうした強い企業から、いま熱い注目を浴びている国がある。ベラルーシだ。現地を訪れた大前研一氏がその最先端のモデルをリポートする。
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東欧のベラルーシは、ほとんどの読者にとって馴染みがない国だろう。1991年に旧ソ連から独立した共和国で、首都はミンスク。東にロシア、南にウクライナ、西にポーランド、北西にリトアニア、ラトビアと国境を接している。
国土面積は20万7600平方キロメートル(日本の半分強)だが、人口は941万人と多くはない。1人当たりGDPは5820米ドル。アレクサンドル・ルカシェンコ大統領の独裁体制が20年近く続いている、世界でも稀に見る閉鎖国家だ。そのベラルーシを、私は10月に訪れた。
いま世界で大流行しているスマートフォンやタブレット端末用の無料通話・無料メッセージアプリに「バイバー(Viber)」というものがある。LINEと似たようなアプリで、ヨーロッパで人気のあるシステムだ。
そのバイバーを提供している「バイバー・メディア」というイスラエルの会社(本社登記地はキプロス)の開発拠点がベラルーシにあると知り、国境をまたぐ知的ワーカーがどれだけいるのか、どのくらいの能力があるのか、興味を持ったのである。