【『なんでだろう』から仕事は始まる】(小倉昌男・ヤマト運輸元社長)
毎日といっていいほど目にする「宅急便」は、日本が世界に誇る偉大な発明だ。発明したのは運送会社の二代目小倉昌男氏。「個人向け宅配事業など手間がかかって儲からない」と断じられていた時代に逆行して誕生した。
当時の運送会社の仕事は百貨店や電機メーカーなど大口の荷物を一度に運ぶことで儲けが出る――そう信じられていた。しかし、昭和50年、小倉氏の会社は赤字直前の崖っぷちに立たされていた。「なんでうちは儲からないんだ?」。小倉氏は考えた。そして、百貨店などの大口運送をやめて、個人から個人へ荷物を送る宅配事業に転じるべきだと社内で提案した。
ところが、会社の幹部は全員が大反対。「個人相手なんか効率が悪い」。「大口運送が当たり前だ」と批判の声が上がった。しかし、小倉氏は反対を押し切り宅急便をスタートさせる。そして、宅急便開始の年に約350万円だった売上は、2012年には1兆2600億円に成長していた。
「当たり前だ」という呪文に逃げてはいないか。「なんでだろう?」と思う勇気を持て。
【ベストを求めず、徹底的にベターを追求する】(永守重信・日本電産創業者)
日本電産は精密小型モーターで世界的なシェアを誇る企業だ。創業者の永守氏は28歳で音響メーカーを辞めると日本電産を立ち上げた。
しかし、創業当時は小型モーターの試作品しか注文はこなかった。しかも、「重さは半分にしてくれ」とか「消費電力を半分に、でもパワーは二倍にしろ」。無理難題を突き付けられても挫けず開発に挑んだ。
ベストだと自分が思っても、本当にベストかどうかはわからない。時間をかけてベストを求めるよりも、ベターが出来たならそれをすぐ取引先に見せて反応をうかがう。すると改善すべき点が見えてくると永守氏は考えた。
ある時、永守は米国大手メーカーとの商談の席で、サイズの小型化を要求された。永守はすぐさま開発に着手し、半年という短期間で要望の小型モーターを作り上げ相手を驚かせた。まもなくすると、IBMなど米国の大手企業から注文が舞い込んできた。いまや、日本電産の連結売上は7兆円を超える。成功の秘訣は「スピード」だった。
「ベスト」にこだわり過ぎ時間を労してはチャンスを逸してしまう。「ベター」ができたらすぐさま勝負に出よう。