芸能

取材を受けないことで知られる柳家小三治 その肉声を紹介

 取材を受けないことで有名な柳家小三治・落語協会会長(74)が、2時間にも及ぶ異例のインタビューを受けた。「落語家ではなく噺家」を自称してきた小三治が、ここまで自らの芸論を披瀝したことはまずない。小三治の高座を見続けてきた落語愛好家の広瀬和生氏が、その貴重な言葉を記録した。その一部を紹介しよう。(文中敬称略)

 * * *
 落語とは、演者が同時代の観客に向けてリアルタイムで語りかける芸能だ。「古典落語」という言い方が誤解を招きがちだが、決して同じ内容の噺が時代を超えて継承されるわけではない。同じ演目でも噺家の個性によって大きく変わる。落語の歴史とは、それぞれの時代を代表する名人の歴史と言い換えてもいい。
 
 落語協会会長の柳家小三治。彼は古今亭志ん朝、立川談志亡き後の現代落語界の頂点に君臨する「孤高の名人」である。彼が古典落語を通じて高座で表現するのはリアルな「人間社会」そのもの。そこに展開されるちょっとしたドラマに、観客は「いるよね、こんな奴」「あるある、こういうこと」と共感しながら、思わずクスッと笑ってしまう。それが小三治落語だ。
 
 談志と小三治は、共に「人間国宝」五代目柳家小さん(故人)の弟子。小三治という名は小さんの前名で、談志は真打昇進する際にその名を欲しがったものの許されなかった、とも言われている。その名を継いだのだから、師匠がどれだけ小三治を高く評価していたのかは明らかだ。
 
 今の落語界についてどう思うか訊かれると、小三治は考え込んだ。
 
「どう考えればいいんだろうね……随分人数は増えたけど……ただ、若い人に言いたいのは、売れることが成功だとは思わないでもらいたい、ということ。成功したかどうかっていうのは、自分がやってて、喜んでいるかどうかってことですよ。死ぬ瞬間に、ああ、よかった、って思える人が一番勝者じゃないかな。最後はそこへ行くと思います。……俺って陰気?(笑)
 
 今の落語界で動いてる人達と私とは、ちょっと違いますね。考え方が違う。だから俺は落語家に向いてない、ってよく言いますけど。向いてないんじゃない? 何なんだ、俺は(笑)。そういうことを談志さんと話してみたかった。でもあの人、ちゃんと話をしようとすると逃げる人だから。
 
 本当に話をしたかったのは、談志さんだけかなぁ。兄弟弟子ってこともあるしねぇ。ただ、話そうとすると逃げちゃうような感じがして……何か、あまりそばに来なかったね。俺も行かなかったんだけど」

関連キーワード

関連記事

トピックス

森高千里、“55才バースデー”に江口洋介と仲良しショット 「妻の肩をマッサージする姿」も 夫婦円満の秘訣は「お互いの趣味にはあれこれ言わない」
森高千里、“55才バースデー”に江口洋介と仲良しショット 「妻の肩をマッサージする姿」も 夫婦円満の秘訣は「お互いの趣味にはあれこれ言わない」
女性セブン
【悠仁さまの大学進学】有力候補の筑波大学に“黄信号”、地元警察が警備に不安 ご本人、秋篠宮ご夫妻、県警との間で「三つ巴の戦い」
【悠仁さまの大学進学】有力候補の筑波大学に“黄信号”、地元警察が警備に不安 ご本人、秋篠宮ご夫妻、県警との間で「三つ巴の戦い」
女性セブン
どんな演技も積極的にこなす吉高由里子
吉高由里子、魅惑的なシーンが多い『光る君へ』も気合十分 クランクアップ後に結婚か、その後“長いお休み”へ
女性セブン
《視聴者は好意的な評価》『ちびまる子ちゃん』『サンモニ』『笑点』…長寿番組の交代はなぜスムーズに受け入れられたのか?成否の鍵を握る“色”
《視聴者は好意的な評価》『ちびまる子ちゃん』『サンモニ』『笑点』…長寿番組の交代はなぜスムーズに受け入れられたのか?成否の鍵を握る“色”
NEWSポストセブン
わいせつな行為をしたとして罪に問われた牛見豊被告
《恐怖の第二診察室》心の病を抱える女性の局部に繰り返し異物を挿入、弄び続けたわいせつ精神科医のトンデモ言い分 【横浜地裁で初公判】
NEWSポストセブン
バドミントンの大会に出場されていた悠仁さま(写真/宮内庁提供)
《部活動に奮闘》悠仁さま、高校のバドミントン大会にご出場 黒ジャージー、黒スニーカーのスポーティーなお姿
女性セブン
『教場』では木村拓哉から演技指導を受けた堀田真由
【日曜劇場に出演中】堀田真由、『教場』では木村拓哉から細かい演技指導を受ける 珍しい光景にスタッフは驚き
週刊ポスト
日本、メジャーで活躍した松井秀喜氏(時事通信フォト)
【水原一平騒動も対照的】松井秀喜と全く違う「大谷翔平の生き方」結婚相手・真美子さんの公開や「通訳」をめぐる大きな違い
NEWSポストセブン
足を止め、取材に答える大野
【活動休止後初!独占告白】大野智、「嵐」再始動に「必ず5人で集まって話をします」、自動車教習所通いには「免許はあともう少しかな」
女性セブン
裏金問題を受けて辞職した宮澤博行・衆院議員
【パパ活辞職】宮澤博行議員、夜の繁華街でキャバクラ嬢に破顔 今井絵理子議員が食べた後の骨をむさぼり食う芸も
NEWSポストセブン
今年1月から番組に復帰した神田正輝(事務所SNS より)
「本人が絶対話さない病状」激やせ復帰の神田正輝、『旅サラダ』番組存続の今後とスタッフが驚愕した“神田の変化”
NEWSポストセブン
大谷翔平選手(時事通信フォト)と妻・真美子さん(富士通レッドウェーブ公式ブログより)
《水原一平ショック》大谷翔平は「真美子なら安心してボケられる」妻の同級生が明かした「女神様キャラ」な一面
NEWSポストセブン