DNA鑑定を筆頭に、最近話題の「科学鑑定」だが、はたしてどこまで分かり、いかに正確なのか。科捜研や科警研のOBで構成され、映画『そして父になる』など、話題の映画やドラマの監修も務める日本最大の民間鑑定会社「法科学鑑定研究所」を取材した。ここでは筆跡鑑定の最新事情を紹介する。
着物を着た書道家が正座し、遺言書と手紙の文字を見比べ、「偽の遺言書です」と判定を下す──筆跡鑑定というとそんなイメージだが、現在はすでに科学の領域に入っている。
ここでの主役はコンピュータだ。専用に開発された筆跡鑑定ソフトで文書を読み取り、一文字ごとに運筆状況や字画の形態を数値化して比較するのだ。しかし、字を似せて書けば、コンピュータも騙されるのではないかという疑問が湧く。
「人によって、書くたびに字の形が異なる、ブレの大きい字があり、そのブレも数値化されます。字を似せて書くと、ブレがなくなってしまうので、偽造だとわかります」(法科学鑑定研究所・三崎揮市氏)
他にも公表できない鑑定ポイントは多々あり、もはや人による鑑定を完全に凌駕している。文書の真偽を鑑定する際、こういった筆跡だけでなく、インクの質の違いや紙の状態の変化にまで科学のメスが入る。領収書や契約書の数字の改ざんも、赤外線などさまざまな光源の光を当て、顕微鏡で拡大すると、たちどころに偽造がバレるのである。
撮影■佐藤敏和
※週刊ポスト2014年2月21日号