温泉好きもいろいろいるが、ガスマスク片手に国内の前人未到の「誰も行けない温泉」を旅するカメラマンが、大原利雄氏だ。
「北は知床半島から南はトカラ列島まで。道に迷って山中を彷徨し、ある時は滝から落ちて死にかけ、やっと発見した温泉に『バカヤロウ! ただのぬるい水溜まりじゃねぇか!』と一人ツッコミを入れながら入浴した秘湯、奇湯、珍湯の数々。
たとえば、鹿児島・霧島温泉郷の山の中にある川の源泉地帯「山之城温泉」。川がそのまま湯船で、野趣溢れる露天風呂といいたいところだが、危険度はマックス。いたるところ白い水蒸気と共に硫化水素ガスが噴出して、湯に浸かって極楽気分を味わっていると、本物の“極楽”に連れて行ってもらえるオチャメな温泉。温泉とは闘いなんです」(大原氏)
たとえば、群馬の山奥「ガラメキ温泉」は湯船が土管。全国で2~3例しかない日本有数の希少温泉だ。その土管、半分ほどが地中に埋まり、底から30度ほどの温泉が湧出しているというのだから世界遺産級の珍湯といえる。
身の危険など露ほども顧みず、「湯があればそこは温泉」とガスマスクを手にして飛び込む姿。くれぐれもマネは禁物です。
撮影■大原利雄
※週刊ポスト2014年3月14日号