苦心の末に考え出したのは、マットを無くし、本体から伸びるホースを直接ふとんの中に入れて乾燥させる方法だった。これなら10秒で収納できる。だが、改良試作品を目にした事業部長は再び首を横に振り、こういった。
「ホースがついたままじゃないか。ホースを無くせば、収納時間はもっと短くなるはずだろう」
このとき彼らは、初めて思い知らされた。従来のふとん乾燥機に対する概念を一切捨て去り、ゼロからスタートしなければだめなのだ、と。
マットもホースも無くすということは、本体に温風の吹き出し口をつけなければならない。そこで、ふとんの中を隅々まで暖めるために、幅広の吹き出し口を設けることにした。さらに温風の効率を上げるため、吹き出し口を低い台形にしてふとんに入れても隙間ができないようにした。
2012年11月8日、革命的なふとん乾燥機『スマートドライ』は、テレビ通販限定商品として発売された。
「テレビ通販のみでの販売にしたのは、『スマートドライ』の特長をじっくり説明したかったからです」
販売価格は1万円どころか2万円を超えていたが、初日で用意した数千台を完売した。その後もテレビ通販で好調な販売を続け、昨秋店頭発売開始。3か月間の販売台数は当初目標の220%にも達し、春を迎えた今も品薄状態が続いている。
(文中敬称略)
■取材・構成/中沢雄二
※週刊ポスト2014年3月14日号