マッチングアプリぼったくり。押収されたトランプやメニュー表など。2025年5月15日、東京都渋谷区(時事通信フォト)
盗人にも仁義あり、という言葉があるように、犯罪者でもある程度の規範や倫理観が存在すると言われてきたし、思われてきた。ところが、最近の犯罪や悪質ビジネスの界隈では、人として当たり前に感じるだろう躊躇がいっさい、見られないものが増殖している。ライターの宮添優氏が、障害者向けマッチングアプリやSNSなどを介した高齢者の被害についてレポートする。
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「被害届を受理した警視庁管内の複数の警察署が、かなり力を入れて捜査をしていました。あまりにも悪質で前代未聞だと」
警視庁は15日、障害者向けのマッチングアプリで知り合った被害者を誘い、飲食店で高額請求した男女3人を東京都ぼったくり防止条例違反容疑で逮捕したと発表した。さらに28日、新たに3人の男女を同容疑などで警視庁は逮捕した。これらは同じグループによる組織的な犯行だとみられているが、長年にわたり事件取材を続けてきた大手紙警視庁担当デスクですら「あまりに悪質」と指摘するひどい事件だ。
このマッチングアプリ自体は、出会いの機会が限られる障害を持つ人々向けのまっとうなサービスであったが、逮捕された男女らは、この仕組みを悪用。一人でスムーズに移動することが難しい人などを狙い、誘い出しては繁華街のバーへ連れ混み、ぼったくり請求を繰り返していたという。彼らの手口は狡猾だ。マッチング担当の女性がターゲットを誘い店へ行くと、そこは犯行グループの店。勝手に大量の酒を注文し、高額で違法な請求を突きつけ、手持ちの現金が足りない場合は、店の従業員が付き添ってコンビニなどのATMで金を下ろさせてまで支払わせていた。
同様の被害が都内で相次いでいたことで、警察も大規模逮捕劇に踏み切ったというわけだが、犯人たちは障害を持つ人々を狙った理由について、警視庁担当デスクが続ける。
「もし認知や判断に影響がでる障害を持っていて自身で動く事が難しい人であれば、被害に遭っても訴えないだろう、もしくは、被害に遭ったことすら気がつかないんじゃないか、そんな思惑があったというような供述が出ているそうです」(警視庁担当デスク)
警察は民事に介入できないと取り合ってくれない
あまりに悪質ではあるが、SNS上では、すでにずいぶん前から、障害者を狙った悪意のある投稿、やりとりが相次いでいる。