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ソニー出身の元グーグル社長「ソニーの方が先見の明あった」

 あの革命的な「ウォークマン」発売から、今年で35年。その後も、常に私たちに新しい発見と商品を提案してきたソニーが今年2月、大規模なリストラ策を発表した。

 VAIOシリーズで知られるパソコン事業からの撤退と、BRAVIAブランドを展開するテレビ事業の分社化。いずれも、ソニーの看板事業だったはずなのに、いったいどうしたのだろうか。

 長年にわたってソニーを取材し、『さよなら! 僕らのソニー』(文春新書)の著書もあるノンフィクション作家の立石泰則さんはこう分析する。

「今の平井一夫さん(53才)が社長になって間もなく2年ですが、彼には、ソニーをどのような企業にしたいというヴィジョンが感じられません。リストラ策を見ても、とりあえず目先の赤字を解消したいという、単なる延命策にしかなっていません」

 こうしてリストラの対象になるぐらいだから、パソコンもテレビもよほど売れていなかったんだろうと思いきや、そんなことはないのだという。

「国内に関していえば、直営店のソニーストアや家電量販店などを回って話を聞くと、VAIOもテレビも売れているんです。特に高画質の4Kテレビは国内シェア8割とバカ売れしています。では、どうしてリストラの対象となるかといえば、北米市場など他で売れないから。

 しかしソニーにとって、国内の成功でもわかるように、同じような商品を大量に全世界で売るのではなくて、各国・地域に合った商品を売ることが大切になってきています。それをやらずに、全体でうまくいっていないからと切る。ここに来て先が見え始めたビジネスを切り捨てて、何をやっているんだと思いますね」(立石さん)

 元ソニー社員でグーグル日本法人社長などを務めた『グーグルで必要なことは、みんなソニーが教えてくれた』(新潮社)の著者の辻野晃一郎さんが入社した1984年、すでに売り上げが1兆円を超える大企業だったソニーは、ベンチャースピリットに溢れていたという。

「創業者である井深大さん、盛田昭夫さんがいて、ソニーを世界企業に押し上げたサムライのような社員のかたがたがまだたくさんいました。当時のソニーは光り輝いていて、日本だけではなく、世界中の人が憧れていて、誰しもソニーが日本の会社だということが誇らしく思える、そんな会社だったんです」(辻野さん)

 この時代のソニーは異端児を「面白い奴」と呼んで好きにやらせる度量があったが、そうした雰囲気はなくなっていったという。辻野さんは、そうした“ソニー・スピリット”がなくなったことが、今の低迷を招いているのではないかと分析する。

 その後、ソニーを見限り、グーグル日本法人社長に転身した辻野さんは、そこでソニー・スピリットを見た。

「グーグルに入った時、ああ、昔のソニーみたいだなと思い出しました。人のやらないことをやろうという気概に満ちていて、目の色が違いました。

 かつてソニーはロボット事業を進め、犬型ロボットのAIBOや二足歩行ロボットのQRIOを作るなど、世の中を驚かせましたが、ああいう事業をやっていると、世界中から優秀なエンジニアが集まってくるんです。それを採算が合わないという理由でやめてしまう。今になってグーグルがロボットに投資していますが、よほどソニーのほうが先見の明があったわけです。今さらやろうと思っても、もう取り返しがつきませんよ」(辻野さん)

※女性セブン2014年3月20日号

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