なにはともあれ、ソニーの2013年10―12月期(第3四半期)の中でゲーム部門の業績だけは堅調だ。売上高は前年同期比65%増の4418億円、営業利益にいたっては約4倍増となる180億円を稼ぎ出している。
こうして見ると、冒頭の「PS4がソニーを救う」はまんざらでもなさそうだが、安田氏は厳しい見方を崩さない。
「いまのソニーは各セグメントごとに損益の責任を持たせているので<個別最適>は図っていますが、<全体最適>ができないので全体の営業利益に結び付かないのが弱点です。平井一夫社長が就任以来言い続けている『One Sony』(部門間の垣根を取り払い、総力戦で商品を開発する体制)が執行されていないのです。
例えば、PS4はソニーの持つ音楽や映画のコンテンツを配信することだってできるのに、『ゲームと連動させてもたいして儲からないから安い値段では出さない』などとなれば一体化は難しい。そもそも5年単位で利益を考えるゲーム事業が他の部門の赤字を助けるというビジネスモデルは長続きしないのです」(安田氏)
SCE出身の平井氏だけに、指摘されるまでもなくゲーム事業の構造は痛いほど認識しているはず。だが、目先の利益に頼らざるを得ない苦しさが、いまのソニーには透けて見える。
3月6日には、これまで米国のPS事業を長年支えてきたSCE米国法人社長のジャック・トレットン氏の退任が発表されたばかり。同業他社への移籍も噂される中、主戦場の米国トップがソニーを見限って去るのだとしたら、ゲーム事業の雲行きも怪しくなりかねない。