一部の大手企業でも定昇の恩恵を受けられるのは一握り。しかも、来年の企業業績が落ち込むようなら賞与アップの保証はない。こんな状況で本当に広く景気回復が望めるのだろうか。
「大企業のベースアップが中小企業まで染みわたらない限り“生活実感のない景気回復”は続くでしょう。いま日本の産業構造は大企業の海外生産シフトが進んだせいで、中小企業は塗炭の苦しみを味わっています。
富める者が富めば貧しい者にも自然に冨が浸透するという“トリクルダウン理論”は2000年代より効果を失っているというのが定説。今年の賃金改善でその定説をどこまで覆すことができるかが注目されます」(溝上氏)
中小企業の春闘はこれから本番を迎える。ただでさえ消費増税で家計負担が増す中、賃上げの波及効果が生まれなければ、日本経済は好循環をもたらすどころか疲弊していくに違いない。