ライフ

入院中でも有名シェフの味 「医福食農」連携で病院食が進化

 医療施設を利用する患者に満足度を調査している厚生労働省の「受療行動調査」によると、「不満」の割合が最も高いのは「食事の内容」で13.8%、次いで「病室・浴室・トイレ」が10.3%となっている。同種の調査は全国各地の自治体、病院単位で行われ、とくに食事に特化したアンケートをとり患者さんの満足度向上につとめているところは多い。その結果、最近は病院の食事であっても、おいしくかつ体に良いものが常識となりつつある。

「仔牛肩肉のブランケット カリフラワーの香り」「牛肉のラグー」「ポトフ」など、医療機関で提供される食事とはとても思えないメニューの数々。東京都千代田区にあるクリニック・四谷メディカルキューブでは、院内レストラン「ミクニ・マンスール」と病室の入院食で、オテル・ドゥ・ミクニ オーナーシェフの三國清三さん監修の料理を食べることができる。

「病気やけがでつらいときこそ、おいしいものが食べたいのに、これまでの病院では食欲のわく食事に出合えませんでした。カロリーや塩分、調理法などさまざまな制限のある病院食を手掛けることは、シェフの世界ではタブーとされていましたが、おいしく美しい料理で健康の手助けをしたいと考えて挑戦しました」(三國さん)

 カロリーの高いイメージがあるフランス料理だが、三國さんは1970年代にフランスで提唱された低カロリーの「キュイジーヌ・マンスール」を基礎に、食材がもつ旨みを生かした料理を開発。旬の素材にこだわり、厳選された国産食材をふんだんに使って「ミクニ マンスール」で提供している。

“ドクターズレストラン”の先駆けとして注目されたこの取り組みは、農林水産省が食料自給率向上を目的に行っている「フード・アクション・ニッポン」プロジェクトの「医福食農連携」の事例の1つに選ばれている。

 同様に、全国各地で医療や介護の分野と国産食材の連携を深めた新しい商品開発やサービスがスタートしている。

 たとえば、北海道の「リハビリ・リンゴ園」では、医師の助言を得ながら、農作業をリハビリとして実施。同園では看護学生や医学生の研修も受け入れ、この研修が縁となりこの2年間で保険師1名、医師2名がこの地域の医療機関に就職もしている。冬期間に作られるジャムは、モンドセレクションで銀賞を獲得。今後も改良を加え、金賞の受賞を目指しているという。

 日本一の長寿県の長野では健康・長寿の発信拠点を目指し「おいしい信州ふーど(風土)」を宣言、ブランドを立ち上げた。新潟県のホリカフーズでは米のたんぱく質を25分の1に減らした真空パック米飯や、10分の1とした魚沼産こしひかり使用の真空パック米飯を開発するなど、地域の食材を使いながら、新しい価値が次々と生まれている。

 農林水産省では、こうした活動を応援し、「医福食農」の連携をさらに強化することで、新たな食の創造を目指している。

関連キーワード

関連記事

トピックス

緊急入院していた木村文乃(時事通信フォト)
《女優・木村文乃(37)が緊急入院》フジ初主演ドラマの撮影延期…過密スケジュールのなかイベント急きょ欠席 所属事務所は「入院は事実です」
NEWSポストセブン
愛知県豊田市の19歳女性を殺害したとして逮捕された安藤陸人容疑者(20)
《豊田市19歳女性刺殺》「家族に紹介するほど自慢の彼女だったのに…」安藤陸人容疑者の祖母が30分間悲しみの激白「バイト先のスーパーで千愛礼さんと一緒だった」
NEWSポストセブン
女子児童の下着を撮影した動画をSNSで共有したとして逮捕された小瀬村史也容疑者
「『アニメなんか観てたら犯罪者になるぞ』と笑って酷い揶揄を…」“教師盗撮グループ”の小瀬村史也容疑者の“意外な素顔”「“ザ”がつく陽キャラでサッカー少年」【エリート男子校同級生証言】
NEWSポストセブン
2023年7月から『スシロー』のCMに出演していた笑福亭鶴瓶
《スシローCMから消えた笑福亭鶴瓶》「広告契約は6月末で満了」中居正広氏の「BBQパーティー」余波で受けた“屈辱の広告写真削除”から5カ月、激怒の契約更新拒否
NEWSポストセブン
詐称疑惑の渦中にある静岡県伊東市の田久保眞紀市長(HP/Xより)
《学歴詐称疑惑の田久保眞紀・伊東市長》東洋大卒記者が卒業証明書を取ってみると…「ものの30分で受け取れた」「代理人でも申請可能」
NEWSポストセブン
オンカジ問題に揺れるフジ(時事通信)。右は鈴木善貴容疑者のSNSより
《フジテレビに蔓延するオンカジ問題》「死ぬ、というかもう死んでる」1億円以上をベットした敏腕プロデューサー逮捕で関係する局員らが戦々恐々 「SNS全削除」の社員も
NEWSポストセブン
キャンパスライフを楽しむ悠仁さま(時事通信フォト)
《新歓では「ほうれん草ゲーム」にノリノリ》悠仁さま“サークル掛け持ち”のキャンパスライフ サークル側は「悠仁さま抜きのLINEグループ」などで配慮
週刊ポスト
70歳の誕生日を迎えた明石家さんま
《一時は「声が出てない」「聞き取れない」》明石家さんま、70歳の誕生日に3時間特番が放送 “限界説”はどこへ?今なお求められる背景
NEWSポストセブン
ノーヘルで自転車を立ち漕ぎする悠仁さま
《立ち漕ぎで疾走》キャンパスで悠仁さまが“ノーヘル自転車運転” 目撃者は「すぐ後ろからSPたちが自転車で追いかける姿が新鮮でした」
週刊ポスト
無期限の活動休止を発表した国分太一
「こんなロケ弁なんて食べられない」『男子ごはん』出演の国分太一、現場スタッフに伝えた“プロ意識”…若手はヒソヒソ声で「今日の太一さんの機嫌はどう?」
NEWSポストセブン
1993年、第19代クラリオンガールを務めた立河宜子さん
《芸能界を離れて24年ぶりのインタビュー》人気番組『ワンダフル』MCの元タレント立河宜子が明かした現在の仕事、離婚を経て「1日を楽しんで生きていこう」4度の手術を乗り越えた“人生の分岐点”
NEWSポストセブン
元KAT-TUNの亀梨和也との関係でも注目される田中みな実
《亀梨和也との交際の行方は…》田中みな実(38)が美脚パンツスタイルで“高級スーパー爆買い”の昼下がり 「紙袋3袋の食材」は誰と?
NEWSポストセブン