世界で初めて、パソコンの底板にマグネシウムリチウム合金を採用することが決まった。それでもまだ900グラムを切るのは難しい。

「液晶画面の厚さを0.3ミリ薄くして4グラム削減。一体型のキーボードにして15グラム削減と、泥臭く細かい引き算を積み重ねて少しずつ、少しずつ軽くしていきました」

 とうとう初代の『LaVie Z』ができあがった。13型クラスのノートパソコンでは信じられない「875グラム」という軽さで。2012年8月、発売したとたん話題騒然、他を押しのけて売れまくった。

 初代をさらに越えるべく、第2世代『LaVie Z』の開発が始まった。目標はいよいよ「800グラム」を切ること。しかし、当事者の中井氏にさえ、これ以上の軽量化のヒントがどこにあるのか見当がつかなかった。

「正直、削り尽くしていると感じていたのですが、さらに底板を見直して0.1ミリ薄くしたんです。画面はIGZO(※注)を採用し高精細化しかつ0.3ミリ薄くできました。消費電力を抑えてバッテリーはさらに軽量化。あとは何をすればいいのか」

 意外なところにヒントがあった。「色」だ。

「ビジネスマンには黒のモデルが人気です。でも初代はシルバーしかなかった。だから第2世代ではどうしても黒を出したい。ところが黒く塗ると重たくなるとわかって、頭を抱えました」

 色と重さとが関係しているなんて、意外だ。黒い製品は通常、極小のビーズ粒子を混ぜた塗料を何回か重ね塗りする。塗る回数を減らすと光が乱反射して黒い色がきれいに出ない。だが、ほんのわずかな重さの粒子も塗り重ねれば1グラム、2グラムと積み上がってしまう。

「塗料の色や粒子の大きさを変える試行錯誤が続き、塗料メーカーに3日間泊まり込みました。50種類以上の色の試作を繰り返してやっと、1回の塗装できれいな黒を出す方法が見つかったんです」

 いよいよ「800グラム」を切る時が来た。第2世代『LaVie Z』は2013年10月に「795グラム」で発売された直後からヒットチャートを駆け上り、約半年が経った今も13型クラス以下のWindowsノートパソコンでぶっちぎり、トップの売れ行きを持続している(GfK Japan調べ。同時期発売のPCで、タブレットを除く)。

 手にとると「えっ」と思うくらい軽い。ふわりとしてケースの中は空気?

と思うほど。「軽すぎて鞄に入れていたのを忘れたかと思って焦る」というユーザーの感想もあった。それは嬉しかった、と中井氏は語る。

「商品ってサプライズが大切です。手に取るたびに驚きがある製品を作りたかったんです」

※注:シャープが量産化に成功した高精細・省電力を特徴とする液晶ディスプレイ。

※SAPIO2014年5月号

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