沖縄県竹富町が八重山地区の採択に反した教科書の使用を決めたことが波紋を呼んでいる。
小中学校で使用される教科書は、文部科学大臣の検定を経て「適切」とされたもののなかから所管の教育委員会が1種類を採択する。
沖縄県の石垣市・与那国町・竹富町の1市2町は、八重山地区採択協議会をつくり、これまで同一の教科書を採択してきた。平成23年の夏の採択で同協議会は中学公民教科書に育鵬社版の使用を決定。ところが竹富町はこれに従わず、東京書籍版の使用を決め、今年度もその方針を継続している。
これが採択地区で同一の教科書を使うと定めた教科書無償措置法に違反しているとして、文部科学省は今年3月14日に竹富町に是正要求を出したが、竹富町側は応じない構えを見せた。
この問題の根本にあるのは、育鵬社版と東京書籍版の“中身”の違いであるとわかる。麗澤大学教授で、日本教育再生機構の理事長を務める八木秀次氏が指摘する。
「これまでの教科書は日教組の主義主張がストレートに表われていた。それでは問題があるとして10数年前に扶桑社が新しい歴史教科書を作り始め、現在はその子会社である育鵬社が教科書を作っている。3年前、八重山地区ではこの育鵬社版の公民教科書を採択したわけですが、教職員組合の力が強い竹富町がこれに猛反発している」
実際に、中学の公民の教科書の記述内容はどれほど異なるのか。両社の教科書を比較してみよう。
領土問題については、育鵬社版『新しいみんなの公民』では、北方領土、竹島、尖閣諸島について〈これらの領土は歴史的にも国際法上も、日本の固有の領土です〉と明記。例えば竹島については〈国際司法裁判所に付託することを提案しましたが、韓国はこれを受け入れず、現在に至っています〉と外務省ウェブサイトを引用しながら詳しく記載し、中国の主張に対しては〈中国が挙げている根拠はいずれも「領有権の主張を裏付けるに足る国際法上有効な論拠とはいえません」〉とまで書いている。
一方、東京書籍版『新しい社会 公民』は、北方領土と竹島を〈日本固有の領土〉、尖閣諸島を〈日本の領土〉としているが、コラムで扱っているだけで詳しい記述はない。
ちなみに、帝国書院版『中学生の公民 よりよい社会をめざして』では、領土に関するページそのものが存在せず、「日本固有の領土」という表記もない。
※週刊ポスト2014年5月2日号