100歳以上生きてきた「百寿者」研究のパイオニアの一人で、沖縄の百寿者の研究を30年以上行なってきたという鈴木信氏の調査によると、百寿者のいる家系といない家系とでは、家族の平均寿命が異なることがわかっている。百寿者がいる家族の方が長生きなのだ。ただ、650人以上の百寿者に対面してきた慶応義塾大学医学部老年内科の広瀬信義医師の調査では、家族の中でひとりだけ長生きをする人もいるという。
「遺伝的要素が強いのではないかと、先祖も長寿者である長寿者だけ集めて遺伝の研究をしようという動きがあります。今のところ、平均寿命に達するまでの遺伝の力は2割から3割と、それほど高くないことが分かっています」(以下、カッコ内は広瀬氏)
対面調査を続けていると、百寿者の顔に共通点があることに気がついたと広瀬氏は言う。
「みなさん、耳が大きいのです。耳全体が大きい方と、耳たぶの大きい方と、二通りがあるようです」
なぜ耳が大きいと長寿なのかは不明だが、こんな仮説が考えられるという。
「耳は軟骨でできています。軟骨は、骨同士が擦れないよう、関節の表面を覆っています。これが足りなくなると変形性関節症になり、膝や股関節が痛くて動けなくなってしまいます」
この変形性関節症の原因となるのは、アスポリンという遺伝子で、軟骨の合成に関係する。軟骨の合成が盛んで量が多い人は変形性関節症になりにくい。つまり、耳が大きいということは、軟骨の合成が盛んで変形性関節症になりにくい可能性があるため、元気で長生きできるのかもしれない。
百寿者は当然病気には強いのだろうか。
「病気にならなければ100歳まで生きられるというわけではなく、老化が進めば、病気をしなくても虚弱になります。この虚弱から免れることが、元気で100歳になる秘訣です」
虚弱というと風邪をひきがちというイメージだが、百寿者は風邪をひかない傾向にある。
「これまでの100年、衛生状態はよくありませんでした。その時代を乗り越えてきただけに、抵抗力が強いのではと考えられます」
体力増進で抵抗力のある身体を作れば、百寿者に近づけるかもしれない。
※週刊ポスト2014年5月9・16日号