日本の紙おむつの市場規模は、3000億円といわれる。とりわけ急成長を遂げているのが大人用の紙おむつである。2007年には45億枚程度だった大人用おむつの生産量は、2013年にはおよそ65億枚にまで成長した(日本衛生材料工業連合会調べ)。1980年代の後半から大人用おむつ市場に本格参入したユニ・チャームの香川県観音寺市にある四国工場へ足を運び、大人向けおむつのひとつ、男性専用の尿漏れパッド開発について訊いてきた。
おしっこを出し切った。そう思ってパンツをあげると、“ちょろっと”漏れてしまったことに気づく。日本の成人男性の6人に1人、50歳を超えると実に3人に1人がこういった尿漏れの経験者だという。しかし、こうした男性の尿漏れに対処する商品は少なく、女性用の尿漏れパッドなどを下着に装着して間に合わせてきた方も多い。
ユニ・チャームはこの春、男性専用の軽失禁用パッド、『ライフリー さわやかパッド 男性用』を発売した。
「試作品は50パターン以上作りました」
そう言って笑うのは商品開発部チーフテクノロジストの中嶋海陽氏だ。当初は女性用尿漏れパッドを改良すればそれなりのモノができるだろうと考えていたが甘かった、と語る。
「女性と違って男性は性器が外に出ているため、上下左右に動きます。これを違和感なく包み込むためには全く新しい考え方をしないとダメでした」
とはいえ、どのような形状にすればいいのか。プロジェクトスタートから約1年、袋小路に陥った開発チームの道を照らしたのが上司のこんな一言だったという。
「野球のキャッチャーとか、アメフトの選手は股間に防御カップを入れてるだろ、アレがヒントになるんじゃないか?」
中嶋氏はすぐに香川県中のスポーツ用品店をまわり、防御用カップを買い漁った。
「実際に装着してみて“これだ”と思ったのがキャッチャー用の防御カップ(ファウルカップ)でした。包まれている装着感があり、安定感もある。ようやく商品コンセプトが見えた瞬間でしたね。従来の試作品は“平面”でしたが、防御カップのような“立体感”こそ、男性性器を包む際に必要だということに気づいたんです」(中嶋氏)