幸い、“超立体マスク”をはじめ、同社には平面の紙を立体構造にするノウハウがあった。
「吸収体の内側に、カップ構造を促すような“折り目”をつけて立体を実現させました」(中嶋氏)
課題はまだあった。 男性は性器の構造上、股間の前部分にパッドの中心をそろえなければならない。パッドは垂直に近い角度でパンツの中に収まることになる。尿は当然、下に流れようとする。漏れの原因だ。これを防ぐために前後に折り返しのポケットをつけた。
「これで、しっかりと水分を受け止められる」
課題が見つかるたびに、開発者たちは夜遅くまで研究室にこもって解決策を探した。試作品が完成すれば全員がまずそれを試着したという。
「装着して歩く、走る、しゃがむ、ジャンプする。みんないろんなことをやってみるから、ちょっと異様な雰囲気ですよね。中には数日間ずっと穿き続けて、不備がないかを試す人もいました」
苦労を重ねただけに、実際の商品がベルトコンベアーを上がってきたときは思わず涙が出てしまいましたよ、と中嶋氏は感慨深げに語った。
※週刊ポスト2014年6月6日号