一般的に女性がハンターを目指す動機は、どんなものなのか。同サイト内の説明ページでは、次の3パターンが挙がっている。
〈食べ物に対する関心から、米や水、野菜、魚だけでなく、自分で納得できる〈肉〉と向かい合うライフスタイルを選んだ女性〉
〈都市農村交流の中から野生鳥獣による食害・獣害を目の当たりにし、森林保護・環境保全に関心を持った女性〉
〈山歩きだけでは物足らず、少しだけステップアップしようと思った女性〉
やや抽象的だが、なんとなく分かる。これらは、例えばNGOや社会貢献型の仕事に就くようなタイプの心性と似ている。それこそ「森ガール」や「山ガール」のような消費者としてだけの存在ではなく、世の中の仕組みとダイレクトに結びつく者でありたいといった欲望。ちょっとぐらい大変でも、自力で生きていることの実感を大切にしたいという価値観の台頭。ネット用語で言いかえれば、けっこう尖った「リア充」重視の人々かもしれない。
実は、性別や年齢に関係なく、そうした生き方を優先する人が増えているような気もするが、とりあえずは今でも「若い女性なのに~」という文脈のほうが衆目を集めやすいので、「狩りガール」がニュースになるのだろう。その裏で、人知れず腕を磨いている「狩りボーイ」も当然いるはずだ。
日本人の多数がお肉の出所どころか、お魚は骨があるから苦手と言ってのけるご時世にあって、まったく正反対に向かう人たち。2011年にその名も『女猟師』というルポルタージュが出て一部で注目されたり、同年から『山賊ダイアリー リアル猟師奮闘記』というマンガがヒットしたりといった話もある。狩猟を職業とすることは極めて困難だが、究極の一次産業として気になる世界であることは確かだ。
「目指せ!狩りガール」を読んだら、私の胃袋も鳴ってきてしまい、北海道料理店でエゾシカ肉をいただいてきた。火の入れ方が上手ければ、とてもジューシーでくせもなく、味のいい赤身肉だとあらためて思った。サイトの主人公のように「獲るところを見てみたい」という気持ちにはならなかったが、「このお肉がどうやって来たのか?」は知りたくなった。
「狩りガール」がこのまま増えて、狩猟の世界が活性化したなら、いわゆるトレーサビリティーをしっかりさせて、誰がいつどうやって獲った肉なのか分かるようにするといい気がした。で、食べる側担当としては、店のメニューにある「狩りガールARIが獲った根室のエゾジカ背ロースのロースト」といった能書きを読んで注文するのも、一興なんじゃないかなどと考えた。