高齢化が猛スピードで進むなか、日本中の自治体が大鹿村と同じように介護サービスの行く末を案じている。
国は費用削減のため、要支援向けサービスの受け手として、NPOや無償のボランティアに期待を寄せる。しかし、専門職である介護を“善意”に委ねるのはきわめて危険だと前出・小川事務局長は強調する。
「要支援に多い認知症の初期段階には『もの盗られ妄想』があり、“私の大切なものを盗んだ!”と他人を攻撃しがちですし、精神的に不安定で介護者に暴力をふるうこともある。対応を誤ると認知症が急速に進行しますが、経験のないボランティアがこうした修羅場に対処できるのか。さらに第三者が自宅に上がり込む訪問介護で、受給者のプライバシーが守られるかも疑問です」(小川事務局長)
慣れない現場で高齢者とトラブルになった時、現在の介護福祉士のような資格を持たないNPOやボランティアだと、責任の所在が曖昧になる恐れがある。そのしわ寄せは当然、家族に及ぶ。
「要支援の人はひとり暮らしや高齢夫婦が多い。離れて住む家族の介護がかろうじて成り立つのは、ホームヘルプやデイサービスなどがあるからです。これらが減ると家族の介護負担が増え、年間10万人を超える介護離職・転職がさらに増える恐れがあります」(小竹さん)
現在、介護休業制度で、家族の介護を理由に年93日を上限に休むことができるなどと、法律で定められている。しかし、介護は、出産や育児と違って、いつ終わりが来るともわからず、仕事を辞めざるを得ないのが実情なのだ。失業し、貯金を切り崩しながら介護をする家族に、今度は経済的負担がのしかかる。
※女性セブン2014年6月12日号