──そこに出て行くのも勇気が要りますよ。
哀川:いやいや、全然平気だった。だって、みんな俺らより若いし、年下に負けるわけがないんだから(笑)。俺の同級生でむちゃくちゃ強いのがいたんだけど、そいつは兄貴には絶対勝てなかったもん。やっぱり年上は強いんだよ。だから暴走族に送ってもらったことがあるよ、新宿から。知らない暴走族を朝方に止めて、ちょっと家まで送ってよって(笑)。一世風靡セピアの頃は、次の店に行くのが面倒くさいから暴走族を止めて、ちょっとあそこの店まで送ってってやってた。
──タクシー代わりにして(笑)。
哀川:一番早いよ。すごく丁寧だった。タクシーなんかよりも道をよく知ってるよ(笑)。
──そんなことばかりしてたら、「六本木で一番元気な男」という噂が広まったわけですね。
哀川:そうそう。要するに、伴明さんも賭けだったんじゃないの? こっちは、役者なんてなんでそんな面倒くさいことをみんなやるんだと思ってて、無理だと思ってたから。
──セリフを覚えるのが嫌いですからね。
哀川:ホントだよ! 一番ビックリしたのは、みんな毎日時間どおりに来るんだもん。朝方3時ぐらいに終わって、翌朝7時に来てるから、大丈夫? みたいな。俺、こいつら絶対頭おかしいと思ったよ(笑)。で、言われたの。「来ればなんとかなる」って。だから俺は熱があっても運んでもらったよ(笑)。それで寝たままメークとかされたよ。俺。すごいよね。
◆哀川翔(あいかわ・しょう)/1961年、徳島県生まれ。俳優。1984年から一世風靡セピアのメンバーとして活躍し、『前略、道の上より』でレコードデビュー。その後、テレビドラマや映画を舞台に俳優として活躍し、1990年代には『ネオチンピラ 鉄砲玉ぴゅ~』シリーズを皮切りに多数のVシネマに出演した。2005年に日本アカデミー賞優秀主演男優賞を受賞し、映画やバラエティ番組など多方面で活躍。現在、来春公開予定の芸能生活30周年記念映画(品川祐監督)を撮影中。
撮影■藤岡雅樹
※週刊ポスト2014年7月11日号