ところが、そんなエコノミストたちがそもそも政策について、しっかり勉強しているかといえば、そこが怪しい。あるベテランは語った。
「規制改革会議のペーパーだって100ページもあるんですよ。これをぜんぶ読んでいるエコノミストが何人いますか。まして議論の経過を議事録で追っている人なんているわけがありません。みんな忙しいんだから」
すると問題はむしろ、そんなエコノミストたちを安易に使い続けているマスコミの側にある。なぜマスコミが業界エコノミストを重宝するかといえば、彼らを出すと報道がプロっぽく見えるからだ。
中にはエコノミストの分析や意見を、さも自分の分析であるかのように記事に仕立てるケースもある。独自の経済分析で名を馳せ、民間から官庁エコノミストを経て大学教授に収まったある著名エコノミストは私に怒りをにじませながら語ったものだ。
「ひどいもんですよ。私が喋った話をそのまま自分の署名記事で使うんですから。この手口にはみんな怒ってる。パクリでしょう」
名前を宣伝してあげる代わりに、ときどきパクる。つまり経済記者とエコノミストは「持ちつ持たれつ」なのだ。経済ニュースは「市場の声」の裏側で渦巻く役所とエコノミストと記者たちの思惑を読み込んだほうがいい。
(文中敬称略)
文■長谷川幸洋:東京新聞・中日新聞論説副主幹。1953年生まれ。ジョンズ・ホプキンス大学大学院卒。政府の規制改革会議委員。近著に『2020年新聞は生き残れるか』(講談社)。
※週刊ポスト2014年7月11日号