仕事はあっても働く人がいない――。飲食、販売、サービスなどあらゆる業界で深刻な人手不足に陥っている日本経済。その解決策として重用されているのが女性たちだ。
近年、女性が働く職種の垣根はなくなりつつある。佐川急便が1万人の主婦パートを募集する計画を発表するなど、これまでガテン系で「オトコの仕事」と思われてきた運送業界も、すすんで未経験の女性を採用する時代となった。
空いた時間を利用して自宅周辺でできる配達仕事なら、まだ多くの女性たちの応募も見込めるだろう。しかし、不規則な勤務時間で、ときに長距離運転も強いられるトラック運転手となれば話は別だ。
国土交通省は働く女性のわずか2.4%、2万人しかいない女性トラック運転手を、2020年までに倍の4万人まで増やす目標を掲げた。同省のホームページでは“トラガール(トラック+ガール)”専用のサイトを立ち上げ、現役女性ドライバーの経験談などを紹介していくという。
また、「きつい・汚い・危険」のいわゆる“3K職場”のイメージを払しょくすべく、運送業者に女性でもできる柔軟な業務体系を促したり、女性用トイレや更衣室の設置を呼び掛けたりしていく予定だ。
だが、その程度で本当にトラガールが務まるのか。「そんなに甘い世界じゃない」と吐き捨てるのは、大手食品メーカーの物流子会社で大型トラックを運転するAさん(51)だ。
「運ぶ荷物が決まっている定期便中心の大手運送会社はまだ恵まれています。従業員もたくさんいるから運転技術は同乗しながら丁寧に教えてくれるだろうし、荷積みや荷下ろしもキャスターがついたワゴンやフォークリフトで男性がやってくれる。
でも、本当に悲惨なのは人手が足りなく物流費も削減される一方の下請けや孫請け会社なんです」