夏の行楽シーズンを迎え、家族連れで車で出かける予定の人も多いだろう。だが、例年の悩みのタネは渋滞。ただでさえイライラするのに、同乗している妻や子供にまでブーブー言われて、ストレスはたまるばかりだ。
「渋滞」にはちゃんとした定義がある。NEXCOでは高速道路の渋滞を、「時速40km以下で低速走行、あるいは停発進を繰り返す車列が1km以上かつ15分以上継続した状態」としている。首都高速では「時速20km以下」が渋滞で、一般道では「時速10km以下」を渋滞、10~20kmは「混雑」と呼んでいる。
渋滞の原因は、走る車が増えることによる「交通集中渋滞(自然渋滞)」、工事の規制に伴う「工事渋滞」、交通事故によって発生する「事故渋滞」の3種類があり、全渋滞の7割を占めているのが自然渋滞だ。
「自然渋滞には原因が2つあります。ひとつは交通容量のオーバー。200mlのコップに200ml以上の水が入らないのと同じです。交通容量はその道路が『1時間に何台の車を通せるか』の値ですが、私たちが日本中の高速道路を調べたところ、その最大値は2300台でした」
と話すのは、『渋滞学』(新潮選書)の著者で東京大学先端科学技術研究センターの西成活裕教授である。
交通容量をオーバーしているなら渋滞しても仕方がない。ところが、交通容量が上限以内でも車間距離が保たれないために渋滞が起こるケースもあるという。
「交通容量がオーバーしていなくても渋滞が起こるのは、車間の詰まりすぎが原因です。例えば上り坂の手前が下り坂になっていて、横から見るとV字型になる箇所は『サグ』といって渋滞になりやすい。
上り坂でスピードが遅くなると、車間距離が縮まるので後続車が『これはヤバい』とブレーキをかける。するとその後ろの車はより強くブレーキをかけるので、それが繰り返されるうちに車が停止してしまうほどの渋滞になるのです」(西成教授)
上り坂で先頭車が時速100kmから95kmに落とすと、それが約15台重なっただけで渋滞が起こるという。
「車間距離40mがブレーキをより強く踏む臨界距離。少しでも前に進もうとして『もっと車間を詰められるかな』と思うと、かえって渋滞を引き起こしてしまう」(西成教授)
※週刊ポスト2014年8月8日