半世紀にわたるムーミン人気の秘訣はどこにあるのか。法政大学社会学部教授で『キャラクター・パワー ゆるキャラから国家ブランディングまで』(NHK出版新書)などの著書もある青木貞茂氏に聞いた。自身もムーミンのファンだという青木教授は、となりのトトロなど、日本発の人気キャラクターとの親和性を指摘する。
「ムーミンは人間ではありませんよね。日本のキャラクターには動物をはじめ、人間に“隣接”したキャラクターが多いんです。これは日本人が、動物や植物のみならず、岩や山、川といったものにも霊魂が宿るというアニミズムを持っているからと考えられます。だから日本ではドラえもんや鉄腕アトムなどのロボットや、座敷わらしなど妖怪、トトロといったちょっとよくわからないもの生き物がキャラクターになるんです。
ムーミンの世界観には、このアニミズムに共通するものを感じます。たとえ物語を知らなくても、キャラクターやイラストを見るだけで、それは伝わってくる。これは私個人の感想ですが、特にジブリ作品との共通点を感じますね。例えばニョロニョロはジブリにも出てきそうだなぁと。アニミズムの原点にあるのは自然の中で生きるということ。フィンランドは森と湖の国で、国土の70%を森林が占めています。自然は豊かであり過酷です。『ムーミンの夏祭り』は、ムーミン谷が大洪水に見舞われるところから物語が始まります」
もう一点、ゆるキャラにも通ずるムーミンの個性に注目する。
「ムーミンは特別なヒーローではないんです。冒険好きでやさしいけれど、甘えん坊で抜けている側面もある。昨今人気のゆるキャラに通ずる“ゆるさ”があるんです。これは個性のみならず、見た目の造形にも言えるかもしれません。そんな“普通”のムーミンが、でも日々を一生懸命、楽しく生きようとしている。だから私たちは身近に感じられるし親しみが湧くんです。とりわけストレスの多い20代から30代の女性にとってムーミンは、寄り添ってくれるキャラクターなのだと思います」(青木教授)
最近では、トーベ・ヤンソンの原画イラストをもとにした大人向けのグッズも増えている。ムーミンに癒される大人がますます増えそうだ。