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「近眼の人は老眼になりにくい」は誤解 確実に症状進行する

 老眼とは、近くのものが見えにくくなる症状で、眼科では一般的に「30センチ以上離さないと新聞や本の文字が読みにくい状態」とされている。老眼研究会によれば、老眼の世界的な診断基準は「40センチ視力表を用いて測定した視力(40センチ視力)が0.4未満」とされている。

 発症年齢には少なからず個人差がある。日本眼光学学会理事で、梶田眼科院長の梶田雅義氏が語る。

「老眼は遅かれ早かれ、加齢とともに訪れる老化現象です。国内外の様々なデータによると、平均的には45歳前後で症状が現われ、60歳前後で進行はほぼ止まるとされています。早く老眼になったからといって、果てしなく悪化するものではありません」

 45歳では28センチ、50歳では43センチ、60歳では82センチ離さなければピントが合わなくなることを示す。この曲線と比較して、老眼の進行がそれほど早くなければ、それは自然な老化現象の範囲内といえるだろう。

 そもそも老眼のメカニズムとは、どのようなものなのか。

 眼球の構造のうちレンズの役割をしているのが水晶体だ。我々は近くを見る時は水晶体を膨らませ、遠くを見る時は水晶体を薄くすることで、スクリーンにあたる網膜にピントを合わせている。

 老眼研究会世話人で、みなとみらいアイクリニック理事長の荒井宏幸氏が解説する。

「老眼になる原因は2つ。1つは、水晶体が加齢とともに硬くなり、膨らまなくなるからです。水晶体の弾性は老眼の症状が現われてから、大体10~12年でほぼ失われます。そのため、60歳前後で老眼の進行が止まるのです。もう1つは、加齢とともに水晶体の厚みを調整する筋肉(毛様体)の力が弱くなり、近くのものにピントを合わせる機能も衰えるからです」

 よく「近眼(近視)の人は老眼になりにくい」といわれるが、それは誤解だという。

 近眼の人は元々、普通の人より近くにピントが合っているため、老眼になってもメガネを外せばピントを合わせる機能を使わなくても近くを見ることができる。そのため老眼になったと自覚しにくいだけで、視力の良い人と同様、確実に症状は進行しているのである。

※週刊ポスト2014年8月29日号

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