国内

複数の死亡例ある赤ちゃんマッサージ 近隣住民「逮捕して」

 今年6月、新潟県南部に本部を置く、子育て支援のNP法人の関西事務所(大阪市淀川区)で、生後4か月の男児が同代表・A子さん(57才)から『ズンズン運動』という赤ちゃんマッサージを受けていたところ呼吸が停止し、その後死亡するという痛ましい事件が起きた。

「A子さんは、男児を膝の上に乗せて首を揉んだり、床の上にうつぶせにして、首を90度以上ひねって顔を上向きにしたりしたそうです」(全国紙記者)

 病院に運ばれた男児には、懸命な蘇生措置が施されたものの、その6日後にこの世を去った。司法解剖の結果、死因は低酸素脳症による多臓器不全だった。

 同法人の本部は、日本海に面した町の静かな住宅地にある。設立は2003年のことだった。ある地元住民が言う。

「当初は保育所か何かかなと思っていたんですが、どうにも様子がおかしくて。一日中、泣き叫ぶ子供の声がやまないんです。いったい何が行われているのか不思議に思っていたら、そのうち“赤ちゃんのマッサージをしているらしい”と噂になっていた」

 A子さんが行う『ズンズン運動』では、正面を向いている赤ちゃんの頭を両手でつかむと、真後ろを向かせるように150度近くひねり、さらにその状態で体をゆすったという。

 腹ばいになっている赤ちゃんは、頭が背中につかんばかりに海老反りにし、さらに首を左右にひねる。大人はもちろん、赤ちゃんにとって首がどれほど重要な部分であるかは説明するまでもなく、どうしてこんなことを赤ちゃんにできるのか怒りさえ覚えるが、この『ズンズン運動』の効果についてA子さんはホームページでこう書いていた。

・身体が歪みにくくなり、左右対称の体形になる。
・呼吸量が増えて造血される。
・目の焦点が合いやすくなる。
・首のすわりが早くなる。

「寝付きがよくなったり、赤ちゃんの免疫力が高まり、アトピー性皮膚炎にも効果があるとも言われていたようです。赤ちゃんが泣こうがわめこうがお構いなしで、様子を見ていた母親が心配になって声をかけても、“たくさん酸素を吸い込むために泣いているの”と手をとめることはなかったそうです」(赤ちゃんマッサージを受けたママを知る人)

 この施術は、1回1時間で1万円。A子さんが独自にあみ出したオリジナルのマッサージだったという。乳幼児にこうした施術を行うことに問題はないのだろうか? 林クリニック院長で小児科医の林滋さんが説明する。

「特に法律で定められた規定もありませんし、マッサージを行うための資格も必要ありません。ただ赤ちゃんは、靭帯や筋肉が未発達ですから、首が座らない赤ちゃんを激しく揺さぶってはいけないことは、昔からの常識。まして、過度に首を曲げたり、限界以上に大きく首をひねられたら、頚椎が損傷し呼吸困難に陥る可能性は大いにあるでしょう。場合によっては、命にかかわる重大な問題になりかねません。写真を見る限り、たいへん危険な行為であることは間違いありません」

 A子さんが行っていたのは、危険と隣りあわせの“死のマッサージ”だったといえよう。実はこの事件から遡ること1年4か月前の昨年2月にも、新潟市内でA子さんがマッサージを施した男児(当時1才)が意識不明になり、同日死亡していた。

「A子さんは書類送検されましたが、マッサージと死亡との因果関係が証明できず、不起訴処分となりました。乳幼児の場合、本人が痛みや苦しさを訴えることができないうえ、『乳幼児突然死症候群』などによる、原因不明の死亡例も少なくありません。そのため、呼吸停止が起きたとしても、それがマッサージによるものだと証明できないんです」(元警視庁捜査一課長・田宮榮一さん)

 取材を進めると、前述した2件の男児の死亡以外にも、子供の呼吸が止まり救急車が来ていたことがあったという。

「このままじゃ、もっと危ない目にあう子が出てくるんじゃないかと思っていたんです。警察にはちゃんと仕事をしてもらって、早く逮捕してほしいとさえ思います」(ある近隣住民)

※女性セブン2014年10月2日号

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