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朝日新聞の「言論の自由」は「朝日の」「朝日記者の」の意か

 福島第一原発事故での吉田調書をめぐる朝日新聞の誤報問題だが、本誌・週刊ポストは朝日の5月20日付の吉田調書報道を直後(6月9日発売号)から誤報と指摘し、朝日から真っ先に抗議書を送りつけられた。そしてこの抗議をたてに、今度は朝日の従軍慰安婦報道をめぐる同社への本誌の取材を拒否してきた。
 
 その言い分は、「(ポストには)抗議中であり、質問に答えない」ということだ。これは、「過去に抗議した案件があるから今後一切の取材を拒否する」という姿勢だ。この理屈がまかり通るなら、朝日に追及された側が一度抗議すれば、朝日はその後取材拒否をされても文句を言えない。

 そうして本誌取材を封殺してきたから、朝日は「吉田調書」誤報を早期に正すチャンスをみすみす逃した。

 本誌9月5日号の記事〈本誌に抗議してきた朝日新聞よ『吉田調書』の虚報を認めよ〉の取材過程の8月20日、本誌は朝日側に核心的な質問を行なっていた。

 朝日は問題となった誤報のなかで、「撤退」という言葉を使った。だが、調書を見ると吉田氏は明確に「逃げていないではないか」「現場は逃げていないだろう」「(『撤退』という言葉を使ったかと問われて)使いません、『撤退』なんて」と話している。そこで本誌は朝日に、なぜわざわざ「撤退」という言葉を使ったのかと問うた。

 だが朝日は電話で、「抗議中のため回答はお断わりする」と一方的に伝えてくるのみだった。記事の根幹部分に対して重大な疑義を呈したにもかかわらず無視したのだ。6月からの度重なる本誌指摘を真摯に受け止め検証していれば、より早く誤りに気付けたはずだが、彼らは批判に正対することなく自ら傷口を広げた。

 従軍慰安婦検証記事では、元朝日記者・植村隆氏が「ソウル支局長からの連絡で韓国に向かった」のが取材の発端だと説明された。本誌はその事実を確認するため、当時のソウル支局長・小田川興(こう)氏に話を聞きに行くと、「まず(朝日の)広報部を通してください」と取材拒否された。朝日はもう社員ではないOBにさえ、箝口令を敷いていたことが窺える。これも明らかな言論封殺だ。

 もちろん、自社に批判的な内容の池上彰氏のコラムを一時掲載しなかったことも言論封殺そのものである。

 9月11日の記者会見で、木村伊量社長は池上氏コラム掲載見送り騒動の際に起きた社員の批判ツイートなどに触れ、「(社員の)自由な言論の場を保障する」と述べた。木村氏のいう「言論の自由」とは「朝日の」あるいは「朝日記者の」自由という意味なのだろう。

※週刊ポスト2014年10月3日号

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