橋下市長は京都朝鮮学校襲撃事件における、差別発言を認めた大阪高裁での判決を引合いにだし、「ああいう下劣な発言はやめろ。裁判所に認定されている事実だ」と訴えた。しかし特別永住制度を廃止したいという考えに対しては、なぜその制度が生まれたかの歴史的なバックグラウンドを説明することもなく、「文句があるなら国会議員に言え」と答えるにとどまった。

 また「あんたが言うヘイトがどうのこうのってデモがあるなら日付言ってくれる?」と言う桜井会長に対し、大阪市内で在特会会員から「射殺する」と言われた在日がいることや、2013年2月に鶴橋で少女が「在日くそチョンコのみなさんこんにちは。いつまでも調子にのっとったら、鶴橋大虐殺を実行しますよ!」と叫んだことなど、具体例を挙げていさめることもなかった。終始、桜井会長の発言が目立つ面談だった。

「桜井会長の舞台みたいになってるのが、腹立つ」

 そう語るのは面談を取材していた、フリーライターの李信恵さんだ。李さんはヘイトスピーチで名誉を傷つけられたとして、8月に在特会と桜井会長、まとめサイト「保守速報」を相手取り、合計2750万円の民事訴訟を起こしている。

「途中で橋下市長が打ち切って帰るのは想像できたし、桜井会長が出てきた瞬間につかみOKみたいになるのは、いつもの街宣と同じこと。日頃デモなどを見ている人間からしてみたら、今回の一連の発言も『場の空気をつかんで見せ場を作ってるな』と思いました。でも今日は報道陣がいっぱい来てたから、気合入れてきたんやろうなって」

 李さんは今回の面談が予定調和で終わり、ニュースなどで報道されて在特会の名前が認知されること、編集された動画がネットにアップされて、「橋下市長とやりあった在特会」とみなされることを「嫌だ」と感じている。

 さらに橋下市長が昨年、「当時、慰安婦制度が必要だったことは誰でもわかる」などと発言して物議をかもしたことを、ヘイトスピーチ問題に取り込むことで帳消しにして、結果在特会も市長もwin-winの関係で終わることを危惧しているという。そこで李さんらも、被害者側の声に耳を傾けてほしいと面談を要請したものの、市長は現段階ではその意思はないとしている。

「橋下市長がヘイトスピーチに取り組んでくれるのはありがたいし、朝鮮学校の裁判のことには言及したけど、一方で朝鮮学校の補助金を凍結したりとか、特別永住者を見直すとか、差別の下支えをするような発言もしてきた。結局それも、きれいなヘイトスピーチみたいなものではないかと思う。もしかしたら、そういうところをつかれるのが嫌だったのではないか」(李さん)

 確かに「死ね」「殺せ」だけがヘイトスピーチではないし、マジョリティ同士の罵り合いも、ヘイトスピーチとは言えない。自分では変えられない属性をもとに、マジョリティがマイノリティの尊厳を棄損することが、ヘイトスピーチだ。桜井会長は橋下市長とは「二度と会うことはない」と言い残した。

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