ライフ

彦根城 天守の「隠し部屋」には屋外から見えない小窓が存在

彦根城の天守附櫓の狭間(小窓)

 日本の主要名城が150ある中で、国宝に指定されているのはわずか4城のみ。その中のひとつが、名城・彦根城。

 1604年、家康の命を受けて井伊直継が築城を始めた彦根城は、“リサイクルの城”だ。築城にあたっては、近隣の長浜城などで使われなくなった建材が多く用いられたと伝えられる。

「天守には大津城の建材が使用されています。工期の短縮や建築費の節約が大きな理由でしょうが、大津城は関ヶ原合戦の前哨戦で落城しなかったので、ゲン担ぎの意味も多分にあったと考えられます」(彦根市教育委員会文化財課・三尾次郎氏)

 天守の柱や梁には、元々別の建物で使われていたことがわかるホゾ穴の跡などを随所に見ることができる。

 一方、これまで明かされていなかった天守最上・3階の「隠し部屋」(破風の間)内部が、9月から見られるようになった。入り口は足元にあり、引き戸の高さは30cmで幅は100cmほど。しかし内部は3畳ほどで床下にもスペースがあり、思いのほか広い。

「内部には腰の高さに板で塞がれた狭間(小窓)が2つあり、緊急時には板を打ち破って銃で攻撃することができます。昔の人は身長が低かったので、天井高も十分だったでしょう」(同前)

 彦根城の天守に点在する狭間はすべて同様の仕様で、屋外からは存在がわからない。

「戦いへの備えを見せないことで、敵を油断させる狙いがあったのでは。奇襲攻撃を想定していたのだと思います」(同前)

 見た目の美しさはもとより、城の内部にも知られざる工夫が凝らされている。

【彦根城】
●天守創建者:井伊直継
●天守創建年:慶長7年(1607)
●形式・構造:平山城、複合式望楼型3重3階

撮影■佐藤敏和

※週刊ポスト2014年10月31日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

降谷健志の不倫離婚から1年半
《降谷健志の不倫離婚から1年半の現在》MEGUMIが「古谷姓」を名乗り続ける理由、「役者の仕事が無く悩んでいた時期に…」グラドルからブルーリボン女優への転身
NEWSポストセブン
警視庁がオンラインカジノ店から押収したパソコンなど(時事通信フォト)
《従業員や客ら12人現行犯逮捕》摘発された店舗型オンカジ かつての利用者が語った「店舗型であれば”安心”だと思った」理由とは?
NEWSポストセブン
橋本環奈と中川大志が結婚へ
《橋本環奈と中川大志が結婚へ》破局説流れるなかでのプロポーズに「涙のYES」 “3億円マンション”で育んだ居心地の良い暮らし
NEWSポストセブン
10年に及ぶ山口組分裂抗争は終結したが…(司忍組長。時事通信フォト)
【全国のヤクザが司忍組長に暑中見舞い】六代目山口組が進める「平和共存外交」の全貌 抗争終結宣言も駅には多数の警官が厳重警戒
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《前所属事務所代表も困惑》遠野なぎこの安否がわからない…「親族にも電話が繋がらない」「警察から連絡はない」遺体が発見された部屋は「近いうちに特殊清掃が入る予定」
NEWSポストセブン
放送作家でコラムニストの山田美保子さんが、さまざまな障壁を乗り越えてきた女性たちについて綴る
《佐々木希が渡部建の騒動への思いをストレートに吐露》安達祐実、梅宮アンナ、加藤綾菜…いろいろあっても流されず、自分で選択してきた女性たちの強さ
女性セブン
看護師不足が叫ばれている(イメージ)
深刻化する“若手医師の外科離れ”で加速する「医療崩壊」の現実 「がん手術が半年待ち」「今までは助かっていた命も助からなくなる」
NEWSポストセブン
(イメージ、GFdays/イメージマート)
《「歌舞伎町弁護士」が見た恐怖事例》「1億5000万円を食い物に」地主の息子がガールズバーで盛られた「睡眠薬入りカクテル」
NEWSポストセブン
キール・スターマー首相に声を荒げたイーロン・マスク氏(時事通信フォト)
《英国で社会問題化》疑似恋愛で身体を支配、推定70人以上の男が虐待…少女への組織的性犯罪“グルーミング・ギャング”が野放しにされてきたワケ「人種間の緊張を避けたいと捜査に及び腰に」
NEWSポストセブン
和久井学被告が抱えていた恐ろしいほどの“復讐心”
【新宿タワマン殺人】和久井被告(52)「バイアグラと催涙スプレーを用意していた…」キャバクラ店経営の被害女性をメッタ刺しにした“悪質な復讐心”【求刑懲役17年】
NEWSポストセブン
女優・遠野なぎこの自宅マンションから身元不明の遺体が見つかってから1週間が経った(右・ブログより)
《上の部屋からロープが垂れ下がり…》遠野なぎこ、マンション住民が証言「近日中に特殊清掃が入る」遺体発見現場のポストは“パンパン”のまま 1週間経つも身元が発表されない理由
NEWSポストセブン
幼少の頃から、愛子さまにとって「世界平和」は身近で壮大な願い(2025年6月、沖縄県・那覇市。撮影/JMPA)
《愛子さまが11月にご訪問》ラオスでの日本人男性による児童買春について現地日本大使館が厳しく警告「日本警察は積極的な事件化に努めている」 
女性セブン