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口腔内細菌 糖尿病や動脈硬化や心臓疾患などの疾病を誘発も

 体のどこかが細菌に感染し、その細菌が血液を介して他の臓器に移動して感染を起こすことを「病巣感染」という。1912年、アメリカのビリング博士は、病巣感染の95%が、扁桃と歯、歯肉から発生することを発見した。

 病巣感染の病気の1つとして、IgA(免疫グロブリンA)腎症がある。IgAは桃に多く存在し、本来なら腎臓には存在しないが、長い間原因がわからなかった。1990年代に口腔と、IgA腎症の関係に着目した医師が、桃を切除手術後にステロイドを短期間に大量に点滴する「摘パルス療法」を開発した。これにより多くの患者が、寛解している。

 波多野歯科医院(さいたま市)の波多野尚樹院長の話。

「口には外界から多くの細菌が入り、口腔内には500~700種もの細菌がいます。通常は悪さをしませんが、条件が整うと、ムシ歯や歯周病になるだけでなく、IgA腎症やリウマチなどの病巣感染が起こります。

 最近では、糖尿病などの生活習慣病の悪化や心臓病、認知症の誘発といった全身の疾病にも口腔内細菌が関わっていることがわかってきました。歯周病患者は、そうでない人に比べ心筋梗塞の発作を起こす確率が、約3割も高いという研究も報告されています」

 口腔内細菌には、ムシ歯や歯周病の原因となる病原性菌や日和見細菌がいて、通常は口の中に住みついている。これらの細菌は、歯や歯肉に付着しても、唾液で洗い流される。ところが、甘いものなどを食べると、細菌が付着因子を出し、歯や歯肉の表面などに付着して増殖する。細菌は30分で2個に分裂し、その後4、8、16と2の累乗で増えていき、1つの細菌が24時間後には281兆個になっている。

 大量の細菌が作るコロニーがバイオフィルム(歯垢)だ。口腔内を清潔に保てなかったり、加齢や免疫の低下、唾液の減少などが起こると、感染症が起こる原因となる。

「口腔内細菌の感染症を予防するのは、歯磨きしかありません。3か月(90日)に1回、歯科衛生士にクリーニングしてもらっても、残りの89日の歯磨きを徹底しないと意味がないのです。口の中は複雑な構造なので、完璧に細菌を除去する歯磨きの方法を身に着けなければ、感染症は防げません」(波多野院長)

 口腔内を適正な状態に保つ基本は歯磨きだが、磨き残しの場所などは自覚しにくい。そこで歯科医院で、PMTC(専用機器を用いたクリーニング)を行なうことが重要だ。磨き残しの有無を調べるために、専用の薬剤を歯の表面に塗り、細菌の染め出しをしてから、磨き方の講習を受ける。さらに専用の器具で、歯垢の除去や徹底したクリーニングを実施する。毎日適切な歯磨きを続けることが、健康長寿の秘訣だ。

■取材・構成/岩城レイ子

※週刊ポスト2014年10月31日号

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