目的が絞られていること、手間がかかっても効果があることは、化粧品であればなおのこと重視される。乳液を先に使用する、ひと手間かかるブランドとして知られる株式会社コーセーのコスメデコルテは、簡単ではないと強調することで付加価値をアピールしている。
「『手間がかかっても効果はある』という商品価値にプラスアルファの価値を付けていかねばならないというのが、この数年特に意識してきていることです。そこで、今年は昨年大ヒットした美容液、『AQ MW レプリション(30mL/15,000円税抜)に、同価格でオリジナルのかっさプレートをつけたキットを限定発売しました。
これは、レプリションの効果をより高めるという付加価値の側面と、『AQ MW』が西洋と東洋、両方からのアプローチをコンセプトとしたラインなので、レプリションを西洋の「効きモノ」としたら、東洋の「技」をかっさプレートで加えるというふうに、ブランドコンセプトを改めて伝えていきたいという想いをこめています」(株式会社コーセー セレクティブブランド事業部コスメデコルテ商品企画・土屋幸佑さん)
数年前から「かっさプレート」を使用したマッサージは、美意識が高い女性たちから小顔になると評判を集めていた。そして、各々が持つ美容液と組み合わせ自宅でかっさプレートを使用したマッサージを実践する人が、ごく少数ではあったが存在した。前述の美容家電の開発方法と同様、利用方法などへの考察が深い少数者の意見を、結果としてくみ上げた形のキットを商品化している。
これまでは、多くの人が賞賛するものがヒットする商品だと考えられてきた。しかし、賢い消費のためには、賞賛の数量より、その人にとっての価値を判断できることが大事だ。数は多くなくとも、商品と真剣に向き合う消費者の声をすくいあげることが、新たな商品開発にとっても重要になっている。