パーキンソン病は、脳内の神経伝達物質のドパミンが減少することで起こる神経変性疾患だ。40代以降での発症が多く、高齢化に伴い患者が増加している。手足の震え(振戦=しんせん)や動作が緩慢になる、突進歩行や身体のバランスが悪くなるなど、主に運動症状が起こる。
初期の治療は、L-DOPAを主体とする多様な治療薬により、症状は緩和される。しかし、進行すると治療薬の効果の低下や不随意運動などが起こり、発症から十数年で寝たきりになることが多い。そこで、新しい治療法として研究が進められているのが遺伝子治療だ。
自治医科大学内科学講座神経内科学部門の村松慎一特命教授に話を聞いた。
「2007年から51歳~68歳の6人の患者を対象に遺伝子治療を実施しました。治療後、すべての方で、手足の震えや歩行に改善が見られました。5年後の評価で、心臓病で亡くなった方を除き、症状も治まり元気に過ごされています」
脳内のドパミンは、脳の中心部にある黒質から伸びた突起が線条体(被殻と尾状核)に到達し、そこで分泌される。パーキンソン病は、黒質の細胞よりも線条体まで伸びた突起部分が壊れることで、ドパミンが欠乏する。遺伝子治療は、L-DOPAをドパミンに変換するAADCという酵素を産生する遺伝子を線条体に注入する。これにより、L-DOPAの治療薬を飲めばドパミンができるので、症状が緩和する。
パーキンソン病に対する遺伝子治療は、厚生労働省に実施申請しており、承認が得られ次第、すぐに実施予定だ。
■取材・構成/岩城レイ子
※週刊ポスト2014年11月21日号