「上司の妻を寝取る」。その設定が連載時より大きな反響を集めた樋口毅宏氏の長編小説『愛される資格』(小学館)が単行本化された。樋口氏の熱望による実現した艶話の女王・岩井志麻子氏を招いて実現した対談で、もっとも興奮する男女関係について語りあった。
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樋口毅宏(以下、樋口):昔から岩井先生の大ファンなので、お会いできてとても光栄です。
岩井志麻子(以下、岩井):それはそれは。こんなオバはんに誕生祝いのお花までいただいて、ありがたいことです。『愛される資格』読ませていただきましたよ。
樋口:恐縮です。
岩井:部下が上司の妻を寝取るっていう話ですけど、AVでも上司の妻とか兄嫁とか義母とかを寝取る話がとても多くて。男は立場が上の人の女を盗るのが楽しいんですかね。
樋口:昔から「一盗(いっとう)二婢(にひ)三妾(さんしょう)四妓(しぎ)五妻(ごさい)」といって、一番興奮するのは人の女を盗むことだといわれています。とくに上の立場、強い者の女を寝取るほうが、強奪感があっていいんじゃないですか。
岩井:強奪感ねェ。だけど女はどっちが興奮するんだろう。夫の上司に来られるのと、部下に来られるのと。確かに上司に来られたら枕営業みたいな感じがするけど、部下に来られたら「こいつ、いやらしい目で私を見てたんだな」って興奮するかも。「一盗二婢三妾四妓五妻」で面白いのは、男から見て一番魅力がないのが女房で、それが他の男から見たら逆転して一番になることよね。
樋口:隣の芝生は青いってやつですね。
岩井:やっぱり人妻っていうのがポイントで、背徳の匂いがいいんでしょうね。
岩井:樋口さんは、例えば学生時代に、彼氏のいる女の子とフリーの女の子、どっちに魅力を感じました?
樋口:いやぁ、僕は情けないことに極めてノーマルで、フリーの子のほうがいいです。人のものだとブレーキがかかるっていうか。そういうせいもあって、小説の中だけは、主人公に奔放にさせているんです。
岩井:ほめ言葉にならんかったら申し訳ないけど、樋口さんだったら女の子は安心すると思うんですよ。すべてにおいて後腐れがなさそうだから(笑い)。
※週刊ポスト2015年1月1・9日号