佐川急便は2013年度末、「消費税率引上げによるお届け遅延について」というプレスリリースを発表している。
「4月1日に実施される消費税率8%への引上げに伴う駆け込み需要により、お荷物の配達が3月に集中しているため、一部の地域におきましてお届け遅延が発生しております」 業界でいう“パンク”を起こしたというのだ。
佐川急便の40代の営業マンはこう話す。
「営業所のなかには、集めてきた荷物を発送する作業まではできていたけれど、安い運賃を嫌って、臨時で幹線輸送を行ってくれる下請けのトラック業者が見つからなかったのも、年度末に“パンク”した原因の一つでした。現場にとって、幹線輸送が集まらないことは今でも大きな頭痛のタネとなっています」
佐川急便社内では、2014年の年度末、再び“パンク”を起こさないよう、まだ大型免許をとっていない現場の管理職に免許をとるようにという指示が出ている。大型トラックをリースして、管理職が運転することで乗り切ろうという話もある。
別の佐川の営業マンは現状に強い危機感を抱いている。
「運賃の値下げ圧力は高まり、その一方で、常に今までより高いサービスレベルを求められています。これ以上運賃が下がれば、宅配便というシステム自体が崩壊するんじゃないか、と恐れています」
一昔前まで業界には、「困ったときの佐川頼み」という言葉があった。他の宅配業者から断られた荷物でも佐川ならどうにかして翌日に運んでくれる、という意味だ。そうしたいざという時に無理が利くという余力が、佐川がこれまで伸びてきた理由の一つだった。
佐川急便にとって、目の前の課題は、この年度末をどう乗り切るのか、にある。前年のように、「駆け込み需要」という特殊要因がないのに、二年連続で“パンク”を起こしては、佐川急便の看板に傷がつき、不信感から荷主離れへとつながる恐れもある。
依然として業界二位のシェアを握る佐川が二年続けてパンクを起こす可能性があるということは、今では“社会インフラ”となった宅配便の仕組みが制度疲労を起こし、この先、崩れ落ちてしまう凶兆となるのかもしれない。
※SAPIO2015年2月号