検定に合格しパイロットとしての技能を維持することは、日本の空を守る重要な任務の1つだ。しかし三沢基地では信じられない不正が横行していたという。
以下は、山本氏の覚悟の告発である。
「私は三沢基地の飛行群本部で、ORと計器飛行証明の学科試験を担当していました。
着任してまず驚いたのは、その試験方法です。信じられないことに試験会場がありませんし、試験監督もいません。問題用紙と答案用紙をパイロットに渡し、空いている部屋で問題を解かせる。たとえば計器飛行証明の試験時間は4時間ですが、時間も曖昧な上に試験官もいない。解答を調べながら答案をまとめていたとしてもバレません」(山本氏)
OR検定の内容は、「新規」は記述解答と四択の選択肢解答が合計50問。「更新」は四択のみで50問。合格のボーダーラインは85点以上だったというが、山本氏が知る限り、落第する人はほとんどいなかったという。理由は優秀なパイロットが揃っていたから、ではない。「あってはならない不正が横行していたから」だった。
OR試験はベテランの幹部パイロットも受験する。日本の空を守る能力を保つためには当然である。ところが、彼らには絶対に落ちないよう特別な便宜が図られていたという。
「佐官クラスなど、ある程度以上の階級の幹部には、“参考資料”という名目で採点する時に使う模範解答のコピーを渡していました。幹部が試験に落ちて戦闘機に乗れないという事態になってはいけないという思いから生まれた悪しき慣例なのでしょう。いってみれば、私は組織的なカンニングに加担していたということになります」(山本氏)
※週刊ポスト2015年2月6日号