皇太子は「水」に関する研究をライフワークとしてきた。学生時代には瀬戸内海の水運についての論文をまとめ、以降も水問題に関する国際会議で数多く発表を行なってきた。ところが、これまでトルコやメキシコなど遠隔地で開催されていても参加が恒例となっていた今年4月の「世界水フォーラム(第7回)」には出席しない見込みなのだという。
今回の開催地は韓国・大邱。戦後70年の節目の年に日韓関係に改善の兆しが見えない中、「皇太子訪韓」はなぜ実現しないのかを2月16日発売の『週刊ポスト』(2月20日号)が報じている。
これまでに皇太子が出席した世界水フォーラムでは、開催の約半年前に各国政府から文書で招待を受けている。今年4月開催の会議の招待状は、通常なら昨年9月ごろに届く。同じ時期、新しい駐日韓国大使として柳興洙(ユ・フンス)氏が着任し、9月26日に皇居で信任状捧呈式が行なわれた。大使はその席で「皇太子訪韓」を話題にしたとされる。韓国大使館関係者によると、外交ルートですでに招待状は出されていた。
皇太子訪韓が実現すれば、かつてないほど冷え込んだ日韓関係の「雪解け」のきっかけとなり得る。韓国側にはそうした期待もあったと考えられる。
しかし「日本の外務省がソウルの日本大使館を通じて、『日程が合わないので、今回の招待はお断りする』という内容の外交文書を送ってきた」(前出・韓国大使館関係者)のだという。
皇太子の出席が叶わないのはなぜか。李明博(イ・ミョンバク)・前大統領が「日王(天皇)は訪韓の際には独立運動家に謝罪せよ」と発言した経緯もあり、皇族の訪韓は警備面で万全を期すことが難しく、実現性が低いとの指摘は警察関係者を中心にあるが、今回のケースはそれが本当の理由ではないとみられている。
鍵となるのが戦後70年の節目である今年8月に発表される予定の新たな首相談話だ。
「安倍晋三首相が談話へのフリーハンドを残すためには、皇太子訪韓は少なくとも70年行事の後が望ましい」(外務省関係者)
同誌では、皇太子訪韓の可能性について外務省や韓国大使館などに取材を行なっている。