ヤマト運輸の人事総務部の渡邊一樹課長は「勤怠確認リストに『**』がついているのは、社員がPP入力した労働時間が(上司によって)短縮されて勤務登録されたことを表す印で、最悪の場合、労働時間の改ざんにもつながる」と説明する。
ヤマト運輸は過去に労働時間の改ざん問題で、不祥事を引き起こしている。
読売新聞は二〇〇七年九月二三日、一面トップで「ヤマト運輸 違法残業 記録改ざんの疑い」と伝えている。
記事によると、ヤマト運輸の給与計算の基となる勤怠記録が実際の端末(PP端末を指す)と異なり、労働時間が短くなっていたケースが判明した。記録改ざんの疑いもあり、大阪南労働基準監督署から労働基準法違反で是正勧告を受けた、というものだ。
同社の常務執行役員である長尾裕はこう話す。
「読売新聞の記事が出たことは、当社にとって大きな転機となりました。それまで本社の方で、勤怠の時間を正確に見ることができていなかったという反省に立ち、態勢を見直しました。さらに、ドライバーの負担を軽減するために、積み込み専門の〈早朝アシスト〉や配達を補助する〈フィールドキャスト〉などのアルバイトを増員するなどして負担軽減の態勢を整えました」
〈早朝アシスト〉とは、朝五時からドライバーの代わりに荷物をトラックに積み込む短時間アルバイトを指し、〈フィールドキャスト〉とは、配達荷物の多い午前中にドライバーと一緒になって、荷物を配る短時間アルバイトを指す。
長尾はさらに続ける。
「サービス残業を強要しても、会社にとっていいことはなにもありません。サービス残業を黙認することは会社にとってリスクでしかない。各地の支店長クラスには、ドライバーの無理が常態化しているのでは、お客様にいいサービスは提供できない。(人件費に)お金をかけることも重要な経営判断だと説明しています」
※SAPIO2015年3月号