近年「LUNA SEA」を筆頭に、「PIERROT」や「SIAM SHADE」など、1990年代に活躍したビジュアル系バンド(通称・V系)の復活が目立っている。かつて2000年代初頭から半ばにかけて、ネオ・ビジュアル系と呼ばれるバンドがV系シーンを担っていたが、ここ最近の傾向はどうなっているのだろうか。
V系シーンで今、実力派の若手、中堅バンドにはある共通点が存在するというのは、レコード会社に勤務する男性・Aさん(31歳)だ。
「最近のV系は、2000年代半ばに比べシーン自体の熱が低下している印象はあります。またV系に親しみがない人ほど『V系は演奏力が低い』といった印象を持ちがちですが、若手から中堅バンドのなかでも実力派はたくさんいるんですよ。僕がみる限り、そういうバンドの共通項はメタルバンド出身者、あるいはメタルサウンドに強い影響を受けていること。そしてV系という枠に自分たちをはめ込むことなく自由な音を追求していることですね」(Aさん)
実際に最近のV系では、メタルサウンドのバンドが目立つというのは、別の音楽関連会社に勤務し、自ら「メタラー」(メタルファン)を公言する男性・Bさん(32歳)だ。
「若手だと、今メキメキと頭角を現している『NOCTURNAL BLOODLUST』は、元メタルバンド。現在V系シーンに移ってからも、音は完全にメタルコア、エクストリーム・メタルです。それから『MEJIBRAY』のギタリストは若いながら実力派だと思います。惜しまれつつ2010年に解散してしまったV系メタル界の神バンド『DELUHI』のローディー(ミュージシャンのサポート業務)も務めていました。
また中堅バンドだと、シンフォニック・メタル色が強く、歌唱力、演奏力ともに突出しているのは『摩天楼オペラ』。『ANTHEM』や『Galneryus』などの日本を代表するメタルバンドとイベントに出るなど、今大注目のバンドです。伝説のギタリスト、イングヴェイ・マルムスティーンに影響を受けたギタリストが在籍している他、メンバーにメタル出身者が多い。
他にも、メロディアスでかつメタル色が強い『lynch.』、1990年代的なHM/HR(ハードロック・ヘヴィメタル)を基調とする『NoGOD』も中堅どころでは支持を集めています。彼らは、いわゆるV系と呼ばれる枠を飛び越えていく存在なので、ぜひ食わず嫌いせずにメタラーにも聴いてもらいたいですね」(Bさん)
かつては濃いめのメイクで耽美な雰囲気を醸し出す印象が強かったビジュアル系。現在では、その中でもジャンルが細分化し、メタル色の強いバンドが実力派として注目を集めているようだ。