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高山文彦氏 少年A『絶歌』は内省浅く手記とも呼べない代物

 神戸連続児童殺傷事件(1997年)の犯人「少年A」の手記『絶歌』(太田出版)が6月11日に刊行されベストセラーになっている。遺族に出版の許可を取らなかったことへの是非なども含め、物議を醸している。

『「少年A」14歳の肖像』(新潮社)などの著書がある作家の高山文彦氏は失望を隠さない。

「内省が浅く、手記とも呼べない代物だと感じました。猫殺しの詳細な描写や愛した祖母の遺影の前で自慰にふけるシーンなどエピソードが再現ビデオのように精緻に描かれているだけで、彼が本当に書かなければならなかったことには全く触れられていない。

 それは淳君をはじめ被害者の殺害へ至る道程を自らの身体を切り刻むような思いで自己分析し、なぜ淳君らが殺されなければならなかったかを明らかにすることです」

 同書には、被害者遺族へ手紙を書く際、Aが陥るパニック症状が描かれている。

〈徐々に気持ちが不安定になり、犯行時の様子がフラッシュバックし、悪夢にうなされる日が続く。(中略)睡眠不足で顔面が蒼白になる。食欲が失せ、四六時中喉が渇いて水をがぶ飲みする〉

 高山氏が続ける。

「この程度の苦悩は、内省や悔悟の“入り口”でしかないはず。ここから先、被害者や自らに巣食う『魔物』といかに深く対峙し、葛藤したかが書かれていなければいけなかった。

 Aは精神鑑定で『独我論』という、“この世にあるすべてのものは自分の自我とそれが産み出したものたちであって、他者や彼らが形成しているものは、自分の自我の投影に過ぎない”といった歪な精神構造を指摘されました。そうした卑しい性質は書かれてはおらず、Aはそれをいまも持ち越しているのかもしれない」

※週刊ポスト2015年7月3日号

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