国内

ごみ屋敷解決に「足立区モデル」 行政コストの削減にも貢献

ごみ屋敷の定義はないのも悩ましいところ

 5月から6月にかけてワイドショー『情報ライブ ミヤネ屋』で連日、名古屋市内のごみ屋敷問題が取り上げられ、番組レポーターの説得により片づけを始めたことが注目を集めた。ちょうど5月26日に全面施行された空家等対策の推進に関する特別措置法が法案の審議中には「ごみ屋敷対策法」とも呼ばれていたことから、全国で増え続けるごみ屋敷問題解決がすすむのではと期待されているが、そう簡単にはいきそうにない。

「通称が『空き家対策法』であるように、この特措法は空き家であるごみ屋敷問題には有効です。でも、ミヤネ屋で取り上げられたような居住者がいるケースには直接、効力を持ちません」

 というのは地方自治や都市計画に詳しいライターの小川裕夫さんだ。

「ごみ屋敷問題への対処は法律よりも各自治体の条例が先行してきました。もっとも有名なのは足立区モデルと言われる形で、全国の自治体が真似ています。足立区では最大100万円まで区が撤去費用を負担できるのですが、個人宅の片づけに税金を使うのかという反発もありました。でも、予算がついたことでNPO団体などへ委託できるようになり、かえって行政負担は安上がりになったんですよ」

 足立区の「足立区生活環境の保全に関する条例」は通称「ごみ屋敷条例」と呼ばれ、2013年1月に施行された。専門部署と専任の職員を置き、再発防止も含めた対応をして少しずつ成果をあげている。

 この足立区に続けと全国各地で同様の条例が制定され、最近では6月2日に京都市では条例施行から半年で36世帯のごみを完全撤去したと明らかにした。これからごみ屋敷問題は解決へ向かうのか。

「正直なところ打開策というのはありません。法律ができるのは悪くないことですが、通報するなどしてすぐ行政に頼っても解決には至りません。というのも、強制的に片づけても住人へのケアを継続しないとごみ屋敷は繰り返し出現するからです。再発防止には精神的なケアがとても大事なので、NPO団体などと連携し見守りを続ける必要があります。足立区も本格的な強制撤去は2件しかしていません。

 最近はなり手が減っている民生委員ですが、かつては地域の住民の様子を把握し孤立を防いできました。今でも同様のコミュニティが機能すれば、ごみ問題の暴走は防げます。『おせっかい』は有効なんです。人間はコミュニティから外れると秩序をなくし、生活空間を片づけられなくなる。ホームレスであっても、コミュニティに入っている人は段ボールハウスがきちんと片づけられているんですよ」(前出・小川さん)

 コミュニティから孤立しやすい一人暮らし世帯は1678万5千世帯(「平成22年国勢調査」調べ)。日本の人口は減り続けるのに2030年には1871万8千世帯まで増える見込みだ(2014年「日本の世帯数の将来推計」調べ)。老人だけでの問題ではない。若くても、自分が身動きできる程度にしか部屋を片付けられずにいるなら予備軍といえる。ごみの日や出し方がわからないほどにコミュニティから孤立することがないよう心がけるべきだろう。

関連記事

トピックス

公選法違反の疑いで刑事告訴され、書類送検された斎藤知事(左:時事通信フォト)と折田楓氏(右:本人SNS)
“公選法違反疑惑”「メルチュ」折田楓氏の名前が行政SNS事業から消えていた  広島市の担当者が明かした“入札のウラ側”《過去には5年連続コンペ落札》
NEWSポストセブン
コンサートでは歌唱当時の衣装、振り付けを再現
南野陽子デビュー40周年記念ツアー初日に密着 当時の衣装と振り付けを再現「初めて曲を聞いた当時の思い出を重ねながら見ていただけると嬉しいです」
週刊ポスト
”薬物密輸”の疑いで逮捕された君島かれん容疑者(本人SNSより)
《28歳ギャルダンサーに“ケタミン密輸”疑い》SNSフォロワー10万人超えの君島かれん容疑者が逮捕 吐露していた“過去の過ち”「ガンジャで捕まりたかったな…」
NEWSポストセブン
中居正広氏の近況は(時事通信フォト)
反論を続ける中居正広氏に“体調不良説” 関係者が「確認事項などで連絡してもなかなか反応が得られない」と明かす
週刊ポスト
スーパー「ライフ」製品が回収の騒動に発展(左は「ライフ」ホームページより、みぎはSNSより)
《全店舗で販売中止》「カビだらけで絶句…」スーパー「ライフ」自社ブランドのレトルトご飯「開封動画」が物議、本社が回答「念のため当該商品の販売を中止し、撤去いたしました」
NEWSポストセブン
「地面師たち」からの獄中手記をスクープ入手
「全てを話せば当然、有罪となっていたでしょう」不起訴になった大物地面師が55億円詐欺「積水ハウス事件」の裏側を告白 浮かび上がった“本当の黒幕”の存在
週刊ポスト
大谷と真美子さんを支える「絶対的味方」の存在とは
《大谷翔平が“帰宅報告”投稿》真美子さん「娘のベビーカーを押して夫の試合観戦」…愛娘を抱いて夫婦を見守る「絶対的な味方」の存在
NEWSポストセブン
「お笑い米軍基地」が挑んだ新作コント「シュウダン・ジケツ」(撮影/西野嘉憲)
沖縄のコント集団「お笑い米軍基地」が戦後80年で世に問うた新作コント「シュウダン・ジケツ」にかける思い 主宰・まーちゃんが語る「戦争にツッコミを入れないと」
NEWSポストセブン
令和最強のグラビア女王・えなこ
令和最強のグラビア女王・えなこ 「表紙掲載」と「次の目標」への思いを語る
NEWSポストセブン
“地中海の楽園”マルタで公務員がコカインを使用していたことが発覚した(右の写真はサンプルです)
公務員のコカイン動画が大炎上…ワーホリ解禁の“地中海の楽園”マルタで蔓延する「ドラッグ地獄」の実態「ハードドラッグも規制がゆるい」
NEWSポストセブン
『週刊ポスト』8月4日発売号で撮り下ろしグラビアに挑戦
渡邊渚さん、撮り下ろしグラビアに挑戦「撮られることにも慣れてきたような気がします」、今後は執筆業に注力「この夏は色んなことを体験して、これから書く文章にも活かしたいです」
週刊ポスト
強制送還のためニノイ・アキノ国際空港に移送された渡辺優樹、小島智信両容疑者を乗せて飛行機の下に向かう車両(2023年撮影、時事通信フォト)
【ルフィの一味は実は反目し合っていた】広域強盗事件の裁判で明かされた「本当の関係」 日本の実行役に報酬を支払わなかったとのエピソードも
NEWSポストセブン