新体操「フェアリージャパン」に何があったのか(時事通信フォト)
代表に選ばれたアスリートが、練習の場でのハラスメントを理由に姿を消す──新体操日本代表でそんな衝撃的な“事件”が起きたにもかかわらず、全く報じられていない。競技団体である日本体操協会はその事実を伏せる対応を続けてきたが、取材を進めると数々の疑念が浮かび上がってきた。ノンフィクション作家の広野真嗣氏がレポートする。【前後編の前編】
「萎縮した練習」に
2月26日午前6時前、まだ朝闇に包まれた東京・北区の国立スポーツ科学センター(JISS)に隣接する合宿所アスリートヴィレッジから、細身の女性4人がキャリーバッグを引いて外に出た。
4人は17歳から25歳までのトップアスリート。ロス五輪を目指す新体操日本代表団体(フェアリージャパンPOLA)のレギュラーメンバーだ。
代表に選ばれた選手は、所属チームを離れ、年間を通じてヴィレッジに泊まって練習漬けの日々を送る。その最中に4人が起こした行動は、関係者取材などによると以下のようなものだった。
前夜10時半から当日朝3時半ごろまで約5時間にわたり、体育館という“密室”で受けてきた指導について涙ながらに担当違いの代表コーチに打ち明けた。
その数時間後、近くの停留所から6時過ぎの始発バスに乗って施設を離れた。練習をボイコットする行動に出たのだ。
ひとまず入った赤羽駅近くの飲食店から、彼女たちは所属クラブのコーチに真意をLINEなどで送っている。それと同時に「ここ(JISS)にいるのが苦しい」という旨のメッセージを送った相手は、日本体操協会・新体操部門の強化本部長、村田由香里氏(43)だ。
村田氏はシドニー、アテネ五輪の日本代表で、指導者に転じた現在は日本体育大学准教授。2021年11月以来、フェアリーの指導にあたってきた。