ビジネス

ラーメン紙編集長 「90年代後半ご当人ラーメンで変わった」

 知られざる業界紙・専門誌の世界を紹介。今回は、もはや日本の国民食となったラーメンの業界情報紙です。

『ラーメン新聞』
創刊:2011年
刊行ペース:奇数月1日発行
部数:2万部
読者層:食材メーカー、食材問屋、ラーメン店店主、一般人
定価:1年間(6回発行 奇数月発行)3240円(送料込)
購入方法:発売元・日本食糧新聞社に直接注文。

 ベジポタ系、ドロ系、無化調と聞いて、ピンときた人はかなりのラーメン通とみた。すべてここ数年に流行したラーメンのスープ用語だ。

 ベジポタ系は野菜を煮込んでポタージュのようにしたヘルシースープ。ドロ系はゼラチン質が溶け込んだ、とろみの強い豚骨スープ。無化調は化学調味料をいっさい使わずに作ったスープ。

 ラーメン界には次々と新しい味が生まれていたのだ。岡安秀一編集長(47才)から、ラーメンの歴史を聞く。

「1980~1990年代、札幌ラーメン、博多の豚骨ラーメンなど、ご当地ラーメンが東京に進出して一大ブームを起こしたのですが、ラーメン界を大きく変えたのは、1990年代後半から始まった“ご当人ラーメン”です。個性的なご主人が、従来あった味にとらわれず独自に開発した味で繁盛させ、それをテレビが取り上げ、一気に日本のラーメンのレベルが高くなりました」

 その結果、「今は“まずいラーメン”がなくなった」というのだ。理由は、プロ向け食材の開発が進み、誰が作ってもおいしくなったから。

 ラーメンはいっそう個性が勝負の時代になり、客はより「尖ったラーメン」を求めるようになったという。

 白いタオルをキリリと頭に巻いて、紺のTシャツがおなじみのスタイルの“ご当人”は、店に立っているだけで、腕一本でのし上がろうとする、一国一城の主の心意気が伝わってくるよう。

「店を繁盛させたいなら、1日12時間労働ではダメ。店が閉店してからも、ずっと店にいて、24時間ラーメンのことだけ考えていれば幸せな人。スープを炊いている時間が睡眠時間と考えられる人でないと。これを人にやらせたら『ブラックラーメン』と言われますが、このくらいしないと“おれのラーメン”は完成しません」と岡安さん。

 同紙の人気企画、“ガチで語ろう! ラーメン店主 覆面座談会”では、3人の繁盛店の店主が最近のブームである、澄んだ“清湯スープ”について語っている。

〈C氏 …今はラーメンの作り方を教える学校もあるし、ネットに(清湯スープの)レシピも出ている…それを『オレのラーメンだ!』と出すと、コケる可能性が大きい。

 A氏 清湯がはやりだからといって、安易に清湯系の店を出すとつぶれる危険性は確かにある〉

 自分とは、個性とは何か。どんな味が自分にふさわしいか。ひたすら探求する姿は、禅寺で修行をしている僧侶のよう。

 その“神聖さ”は、店主だけではなく、客にも乗り移るらしく、有名店の行列には、黒っぽい服装の“孤高”の男たちが目立つ。

〈B氏 …今、(ラーメン雑誌の)誌面をにぎわせている『蔦』や『饗くろ喜』は、言うならば“脳で食べさせる店”。ブログで材料のこだわりを語り、作り方を詳細に解説しているので、お客さんは実際にラーメンを食べる前に…脳で食べているのではないか。

 C氏 …最初から『このラーメンはうまいんだ!』と思い込んで食べている傾向はある。単純に食べてうまいというのとは少し違うと思う〉

 女は入り込めない、ザ・男の世界だ。

 岡安さんは次のラーメンをこんなふうに予測する。

「ラーメンに限ったことではありませんが、ヘルシーとか、野菜13品目入りとか、健康を全面に出した料理にみんな飽き始めています。特にラーメンは、女性でも本音をいえばこってり味を食べたい。その代わり、ゆで野菜をのせ放題にして帳尻を合わせる。それを、能書きなしで、さり気なく提供してくれる店が、次に来るでしょうね。現に、タンメン系が売れだしてきています」

 そのタンメンもいいが、刻みネギがたっぷりの、あっさり味のしょうゆラーメンも捨てがたい。いやいや、いっそのこと濃厚な豚骨スープをガッツリ食べたいかも。

 いつまでも心が定まらない記者は、求道的な男たちの行列の中に加われないでいる。

取材・文/野原広子

※女性セブン2015年7月23日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

解散を発表したTOKIO(HPより)
《TOKIO解散には迷いなし?》松岡昌宏、「男気会見」で隠せなかった本音 唯一違った“足の動き”を見せた質問とは?
NEWSポストセブン
佐々木希と渡部建
《六本木ヒルズ・多目的トイレ5年後の現在》佐々木希が覚悟の不倫振り返り…“復活”目前の渡部建が世間を震撼させた“現場”の動線
NEWSポストセブン
東川千愛礼(ちあら・19)さんの知人らからあがる悲しみの声。安藤陸人容疑者(20)の動機はまだわからないままだ
「『20歳になったらまた会おうね』って約束したのに…」“活発で愛される女性”だった東川千愛礼さんの“変わらぬ人物像”と安藤陸人容疑者の「異変」《豊田市19歳女性殺害》
NEWSポストセブン
児童盗撮で逮捕された森山勇二容疑者(左)と小瀬村史也容疑者(右)
《児童盗撮で逮捕された教師グループ》虚飾の仮面に隠された素顔「両親は教師の真面目な一家」「主犯格は大地主の名家に婿養子」
女性セブン
組織が割れかねない“内紛”の火種(八角理事長)
《白鵬が去って「一強体制」と思いきや…》八角理事長にまさかの落選危機 定年延長案に相撲協会内で反発広がり、理事長選で“クーデター”も
週刊ポスト
ディップがプロバスケットボールチーム・さいたまブロンコスのオーナーに就任
気鋭の企業がプロスポーツ「下部」リーグに続々参入のワケ ディップがB3さいたまブロンコスの新オーナーなった理由を冨田英揮社長は「このチームを育てていきたい」と語る
NEWSポストセブン
たつき諒著『私が見た未来 完全版』と角氏
《7月5日大災害説に気象庁もデマ認定》太陽フレア最大化、ポピ族の隕石予言まで…オカルト研究家が強調する“その日”の冷静な過ごし方「ぜひ、予言が外れる選択肢を残してほしい」
NEWSポストセブン
佐々木希と渡部建
《渡部建の多目的トイレ不倫から5年》佐々木希が乗り越えた“サレ妻と不倫夫の夫婦ゲンカ”、第2子出産を迎えた「妻としての覚悟」
NEWSポストセブン
大阪・関西万博で、あられもない姿をする女性インフルエンサーが現れた(Xより)
《万博会場で赤い下着で迷惑行為か》「セクシーポーズのカンガルー、発見っ」女性インフルエンサーの行為が世界中に発信 協会は「投稿を認識していない」
NEWSポストセブン
詐称疑惑の渦中にある静岡県伊東市の田久保眞紀市長(HP/Xより)
《東洋大学に“そんなことある?”を問い合わせた結果》学歴詐称疑惑の田久保眞紀・伊東市長「除籍であることが判明」会見にツッコミ続出〈除籍されたのかわからないの?〉
NEWSポストセブン
愛知県豊田市の19歳女性を殺害したとして逮捕された安藤陸人容疑者(20)
事件の“断末魔”、殴打された痕跡、部屋中に血痕…“自慢の恋人”東川千愛礼さん(19)を襲った安藤陸人容疑者の「強烈な殺意」【豊田市19歳刺殺事件】
NEWSポストセブン
都内の日本料理店から出てきた2人
《交際6年で初2ショット》サッカー日本代表・南野拓実、柳ゆり菜と“もはや夫婦”なカップルコーデ「結婚ブーム」で機運高まる
NEWSポストセブン