実際、特定保健用食品(トクホ)と機能性表示食品の差は、成分や期待できる作用の違いとは限らない。両者ともに一定の健康維持・増進機能をうたっているものの、最大の違いはトクホの「食品ごとに消費者庁長官が作用の表示を許可」に対して、機能性食品は「科学的根拠に基づいた(成分の)安全性機能性を、事業者が消費者庁長官に届け出て表示」となっている。どちらもお上のお墨付きではあるが、認められた内容がトクホは「商品自体の作用」、機能性表示食品は「商品に入った『成分』の機能」が基本線となっている。

 前述の難消化デキストリンを例に挙げると、「SAPPORO+」は製品自体がトクホのテストを通過したのに対し、キリンとアサヒのような機能性表示食品であれば難消化デキストリンに関して、すでにある論拠を引用して届出を出せばいいということだ。機能性表示食品のほうが超えるべきハードルが少ない。

 もっとも、機能性表示食品も届け出ればすべて受理されるというわけではない。制度スタート直後の4月の時点では、3ケタの届け出に対して受理されたのは10%以下。そろえるべき資料が膨大で、書類の不備が起こりがちだったという。結果として機能性表示食品を発売したのは、これまでトクホを扱っていた(≒手慣れていた)企業がほとんどだ。

 よほど画期的な新成分を投入した製品や、斬新な切り口の製品が発売されればともかく、現時点ではトクホと機能性表示食品には、商品(の成分として)のスペックに大きな違いはないと言っていい。

 それにしてもビアテイスト飲料業界(という業界があるとして)の競争は苛烈である。6月30日にはサントリーがトップブランド『オールフリー』に「カロリーゼロ」「糖質ゼロ」「プリン体ゼロ」「コラーゲン2000mg入り」というアイテムを投入した。健康志向は強化されているが、トクホでも機能性表示食品でもない「ふつうのビアテイスト飲料」としてだ。いっぽうで「ヘルシア」シリーズというトクホブランドを持つ花王は、「ヘルシアモルトスタイル」というビアテイスト飲料ですでにトクホの表示許可を得ており、虎視眈々と市場参入を狙っている。

 各メーカーは、健康志向の消費者に何をどう訴えかけるのか。ビアテイスト飲料はコンビニなどの冷蔵フェースで横並びになることも多い。つまり消費者の目の前で、棚での展開量や、減り方が比較される商品であり、「人気を演出する」のが難しいアイテムだ。「棚に大量に並んでいる=売れている」と思い込むほど、現代の消費者は単純ではない。本稿では触れなかったが、もちろん「味」も欠くことのできない商品の力である。 

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