キャリア30年超のスタイリスト・地曳いく子さん


――得意な服に絞って、それ以外の服を捨てると。

地曳:たとえば野球で1軍のスタメンの調子が悪くなった時、使うのはベンチまでで、2軍から呼ばないですよね。服も一緒で、自分が素敵に見える服を週2度3度着る方が、“打率”が上がるんです。着こなしを増やすために混ぜてしまったイマイチな服をばっさりとカットするだけで、おしゃれ平均値は3割上がりますよ。

――捨てる服を選ぶポイントは?

地曳:朝着て、やっぱり似合わないと脱ぎ捨てる服です。太って見えるとか、きれいだけどデザインが古いとか、何か理由があるはずです。取っておいてもまた脱ぎ捨てるだけ。服は人間関係に例えるとわかりやすいです。今楽しくつき合える彼氏がいるのに、昔の男はいらないでしょう? 環境や状況が変わったらつきあう友達が変わっていくように、洋服も環境や年代に合うものを着ればいいんです。

 いちばん悪いのは着ない服。バーにリボンを付けて、着たら一方にハンガーを寄せていくと、実は着ていない服がわかります。着ていて気分が下がる服も捨てましょう。妄想作戦も効きます。自分がスターだったらオフの時、この服で誰かに会えるか。おしゃれライバルや意中の人、会社の社長に会ったらやばいと思うかどうか。この作戦は捨てられますよ。人がどう思うかではなく、自分がその服を許せないということですから。

――“フランス人は10着”といいますが、数の目安は?

地曳:10着は真似できないですよ。湿度が低くて服が劣化したり臭くならないフランスと違って、日本は湿気も多いですから。目安はその人の生活にもよりますね。1シーズン(3か月)で、普段履きの靴2~3足、ニットやブラウス、Tシャツなどのトップス10~15枚、ボトムス3~4枚、ジャケットやカーディガンなどの羽織り物が2枚程度を基本に+αですね。外回りが多い方、冷房のきつい環境など状況に合わせて足してください。

――着ていないけど気に入っているので捨てられない服も処分でしょうか?

地曳:いくらかわいくて気に入っている服でも、2、3年着てないならナシです。自分は若返らないんですから。若向けの服を着ると、顔は劣化するから逆に老けて見えてしまうの。痩せている体形の人ほど、昔の服が入っちゃうから罠なのよ。それぞれの年代に合った「今」を着ないと。Charaさんや吉田美和さんは年を重ねてもおしゃれですよね。年代ごとのトレンドセッターを真似したらいいんです。イタイ若作りをするより、リアルな時代と自分にぴったりとフィットした服を着ているかっこいい大人になりたいものですよね。

【地曳いく子(じびき・いくこ)】
1959年生まれ。スタイリスト。『MORE』『SPUR』『eclat』(集英社)、『Oggi』(小学館)、『FRaU』(講談社)などのファッション誌で30年超えのキャリアを持ち、数多くの女優のスタイリングも手がける。大人の女性の服選びの第一人者として、「着やせ」など実用的なテーマに定評がある。

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