私の記憶の中で、その典型例が、2005年9月から12月です。この年のこの時期に、本邦個人投資家層は、キャリートレードー(高金利通貨買い低金利の円売り)で大儲けしました。
ドル/円やクロス円は、一本調子に上がったため、逆にプロはこの上げに乗り切れず、どこかで調整があるとばかりに売り上がっては、締め上げられて万歳(損切り)となり、個人投資家層がプロに勝った、とまで新聞で報じられました。
12月に入り、マーケットの雰囲気はこの相場はまだ続くと鼻息の荒いものでした。そんなところに、米貿易収支の発表があり、予想より悪い結果が発表されました。その当時でも米貿易収支は、もうそれほどは注目されていない指標でしたが、この時の貿易収支は違いました。悪い結果を受けて、いつもとは違う強烈な売りが巻き起こり、ドル/円で5円強急落しました。
その後、結局9月から上げた本邦勢の約13円分の利益は、ほぼ返上に近い格好となりました。後になって聞いたところによりますと、9月にドル/円のロングを仕込んだシカゴ筋が、貿易収支の発表を利益確定のタイミングに使ったということでした。
こうした12月中に手仕舞いを大々的に行う場合が一般的には多いですが、2012年には米系ファンドがクリスマス休暇返上でドル/円を買い上げてきたこともありました。
※マネーポスト2015年秋号