厚生労働省の平成25年国民健康・栄養調査の推計によると、日本人の高血圧患者は約4000万人。実に国民の3人に1人が患っているという計算だ。主な原因は塩分の摂りすぎだが、その原因は健康的だと思っていた日本食にあるという。
日本人の1日の塩分摂取量は男性で11.3g、女性で9.6gと、国際比較でも多い。たとえば、減塩先進国・イギリスでは加工食品の減塩が進み、2025年には1日3gにまで引き下げる予定だという。
医学博士で管理栄養士の本多京子さんは、日本人が減塩を始める時に直面する昨今の問題について指摘する。
「最近は、日本従来の献立に入っていた定番料理のみそ汁や漬物に代わり、浮上してきたのが加工食品の塩分の問題。背景には外食に頼りがちという実情があり、その姿勢を変える必要があります」(本多さん。以下「」内同)
つまり、減塩を長続きさせるには、家庭料理の創意工夫が前提。そして“減塩=おいしくない”をくつがえすコツをつかむべきなのだ。本多さんオススメの3つのコツを紹介する。
まず、旨味のある食材を活用した方法だ。塩に頼らずおいしさを引き出すには、旨味のある食材を使うのがカギ。そこで、旬の食材や旨味成分の多い食材を活用したい。旬の食材は栄養価が高く、旨味も充分。秋はきのこ、冬は根菜、春は山菜、夏は緑黄色野菜と四季折々の味を楽しむと、体も元気になり、食卓が豊かになるのだ。
一方、旨味成分として知られる食材そのものを活用するのも有効。グルタミン酸を含む昆布やトマト、イノシン酸を含む肉類などを食材に使ってみよう。
まだ、だしをきかせることも有効。汁物や煮物には、だしをしっかりきかせて。かつお節、昆布、煮干し、干しいたけなどのだしの旨味が出ていると、塩やしょうゆを少なめにしても、物足りなさを感じず、おいしく食べられるからだ。
といっても、市販のだしのもとには、塩が添加されていることも。できるだけ天然素材からだしをとるほうが、減塩につながると知っておこう。
続いて、酸味を使って味を濃く感じさせるのもコツ。酢や柑橘類(ゆず、レモン、すだち、かぼす等々)などの酸味を活用するのも、おいしく減塩できる方法。というのも、酸味には塩味を引き立て味に丸みを出す効果があるからだ。
塩での下ごしらえを酢に変えたり、しょうゆをかけるところを、ぽん酢やめんつゆに変えるのも、減塩に効果的。バルサミコ酢を煮詰めて使うのも◎。
前出・本多さんは日本人の味覚の特徴をこう語る。
「甘味・塩味・酸味・旨味・苦味という五味のうち、あまじょっぱくてコクがあると、日本人はおいしく感じる傾向が。日本食では塩、砂糖、油を同時に使う料理が多く、つまり、どんなものにも塩が入っており、他国の食事に比べて塩を減らしにくいのです」
減塩し、うす味に舌を慣れさせるとうれしい副産物が。
「塩を減らすと、自然と砂糖や油の使用量も減り、食生活全体の栄養バランスがよくなる点も見逃せませんよ」
※女性セブン2015年10月8日号