もちろん、タクシー不足のバブル期に横行したような、無許可で営業をする白タク行為は道路運送法に違反しているため、今でも厳しく取り締まられている。そのため、ライドシェアの規制緩和は戦略特区に限られる方向だが、たとえ一部とはいえ“解禁”されること自体にタクシー業界は強く警戒している。
〈国家の法令を遵守し、国民への安全・安心な旅客輸送サービスを提供している公共交通機関たるタクシー事業を根底から揺るがすものであり断じて容認するわけにはいかない〉(全国ハイヤー・タクシー連合会などが採択した決議文)
同連合会がライドシェアの問題点として挙げる「乗客の事故等の危険」「事故が起きたときの補償」「運賃の混乱」は、確かに今後の大きなリスク要因となるだろう。
自動車業界に詳しいジャーナリストの福田俊之氏もいう。
「ドライバーの身分保証や登録方法、運転技術の良し悪しを測る基準などはしっかり設けなければ、事故や犯罪などのトラブルは増えるでしょう。マイカー所有者がガソリン代稼ぎのバイト感覚でやるのは危険です。また、出稼ぎ目的や外国人など地域の道路事情に詳しくないドライバーが増えると、運送効率もなかなか上がっていきません」
そこで、福田氏はライドシェアのドライバーに相応しい「候補者」を例示する。
「普段から旅館ほか各種施設で多くの客をマイクロバスで送迎している人や、宅配便の運転手などは運転技術もしっかりしているので最適。その他、各地に点在するカーディーラーやレンタカー業者なら、車も持っているし、メーカーの信頼もあるので、安心です。
もっとも自治体が本気で“交通空白地帯”を減らそうとするなら、ヒマな公務員が時間に地元で困っている高齢者や介護者などを乗せてあげるくらいの構想を持ってもいいと思います」
ビジネス優先でシェアエコノミーの基本である“支え合い”の精神を失えば、ライドシェアの将来性は失速してしまうだろう。