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新聞の三行広告 「幹部社員募集」「TVタレント募集」の意味

 今でも存在するが、かつて紙面を大いに賑わせた新聞の「三行広告」の多くは、平成の世の感覚で見るとうまく理解できないことも多い。特に時代を感じさせるのが「尋ね人」広告だ。今の時代に目にすることはほとんどない。

〈パパ 居所を知らせて下さい 一夫〉(1970年6月28日付、朝日新聞掲載)

 広告に記されているのは「一夫」というどこにでもいそうな名前、メッセージを送る相手も「パパ」としか書かれず具体性はない。新聞の片隅にこんな一文が出ても、目的の相手が気付いてくれるとはとても思えない。現代人からすれば「なんて無駄なことを……」と思うだろう。だが、当時は簡単に遠距離をつなぐ連絡手段はなかった。

 三行広告の「求人広告」にも“味わい”がある。仕事の内容や待遇が明記されるようになったのは最近のこと。かつては面接するまで何の仕事かわからない広告が少なくなかった。

〈野球 得技者 得可 昼夜学可給万上 専業 相談応 読売〉(1961年5月1日付、日刊スポーツ掲載)

 文末に読売とあるが、もちろんジャイアンツの選手募集ではない。「野球が得意な人が得をしそうだ」ということ以外は業種もなにもわからない。かつては詐欺まがいの求人も堂々と紙面に出ていた。

〈ホスト 学生素人専門 寮有 月40万支払 短期可 出勤自由〉(1983年4月1日付、日刊スポーツ掲載)

 これは1980年代に社会問題となった「ホスト詐欺」に関連する広告だ。この頃の求人広告欄には高額な報酬をちらつかせる「ホスト募集」の文字が躍っていた。報酬に惹かれて集まった男性から数万円の「登録料」を騙し取るという手口だ。こうした詐欺広告の〝バリエーション”は実に豊富だった。「幹部社員募集」は出資を募る肩書き商法、「TVタレント募集」はレッスン料を取る詐欺広告であることが多かった。

※週刊ポスト2015年11月13日号

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