近藤容疑者が駿くんを見た後の第一声だった。彼はインスリン投与を無理矢理やめさせた。以後、およそ治療とは呼べない儀式が始まった。駿くんの体の周囲に何本ものろうそくを立て、「悪霊退散!」と念仏を唱え続けた。山から汲んできたという「龍神水」を飲ませ、栄養をつけるという名目で大量のハンバーガーを食べさせた。注射器や血糖値の計測器は銀紙に包んで物置にしまうよう指示した。
「誰が見ても異常な話です。でも、これまで治らないと言われ続け、ただ絶望するしかなかった両親にとって、“治せる”という彼の言葉は初めての希望であり、抗えなかったのかもしれません。何も知らない駿くんも、“注射がなくなって嬉しい”と笑顔を見せていたそうです」(警察関係者)
彼は1回の治療ごとに「龍神へのお布施」と言って3万1000円を徴収していた。両親が払った総額は200万円以上にもなるという。
当然だが、近藤容疑者の祈祷治療で駿くんが回復することはなかった。今年3月、体調が悪化した駿くんは県内の病院に緊急入院。インスリン投与を受けて容体が安定、同年4月に退院した。近藤容疑者はこの入院に激怒したという。
「子供を殺す気か! 体調が悪化したのは信仰心が足りないからだ!」
そう言って、インスリン投与をやめるよう改めて命じた。
「母親が学校に来て、保健室に常備していたインスリンを全て持ち帰って行きました。もちろん学校側は不審に思いましたが、母親の行動に干渉はできませんからね。入院先からも“インスリンを打たなければ死にます”と再三にわたって説得されていたようですが、両親は近藤容疑者を選んでしまった。彼の言う“完治”という言葉が、それほどまでに悪魔的な魅力を持っていたのでしょうか…」(別の学校関係者)
駿くんの容体は再び悪化し、同年4月26日、意識不明になり病院に緊急搬送。翌日、院内で衰弱死した。葬儀後、やつれきった両親の姿に、近隣住人は誰も声をかけられなかったという。
近藤容疑者は現在、県警の取り調べに、「私の治療ミスではない」と容疑を否認している。両親も保護責任者遺棄致死罪の疑いで聴取されており、近く書類送検されるという。
※女性セブン2015年12月17日号