ライフ

80年の歴史終える築地市場 江戸時代から続く魚河岸プライド

築地の鮪仲卸「樋長」の8代目、飯田統一郎社長

 明け前から、築地市場は食のプロフェッショナルたちで活気づく。ターレと呼ばれる運搬車両が縦横無尽に駆け回り、卸売業者や仲卸業者らでごった返す中、魚が荷台にのせられて行き交う。

 日本の台所とも称される築地市場は、水産物と青果物を取り扱う総合市場だ。敷地は、東京ドーム5個分の約23万平方メートル。内部は卸売業者売場、仲卸業者売場、冷蔵庫施設など様々なブロックに分かれている。

 1日当たりの入場者数は4万人超。約1万9000台の車両が出入りする場内には、日本だけでなく、世界各国から水産物や青果物が集まる。特に水産物の年間取扱量は45万トン。金額にして4350億円(2014年実績)と世界最大級の取引規模を誇る。

 その歴史は江戸時代にさかのぼる。江戸幕府の開祖・徳川家康が大坂・佃村から漁師を呼び寄せ、魚を幕府に納めた後に余った魚を日本橋のたもとで売ることを許可したのが、築地市場の前身、日本橋魚河岸の始まりとされる。大正12年の関東大震災をきっかけに昭和10年、現在地に移転した。今も築地市場を「魚河岸」と呼ぶのは江戸時代の呼称の名残である。

 水産物が私たちの食卓に届くまで、様々な種類の業者を介する。全国各地の水揚げ漁港などから集めた魚介を市場内でセリや入札にかけ、仲卸業者や売買参加者に販売するのが卸売業者だ。卸売業者には農林水産大臣の許可を得た者しかなれず、築地市場(水産物部)には7社が名を連ねる。このうち「大物」と呼ばれる鮪のセリを行なっているのは5社。彼らは真夜中の日付が変わる頃から準備に忙しく動き回る。

 一面にドライアイスが気化したような真っ白い霞がたなびくのは、冷凍鮪のセリ場だ。セリを前に、仲卸業者の目利きたちが数百本もの鮪を真剣な表情で見つめている。時に、懐中電灯で照らしながら身質を丹念にチェックする。

 朝5時半。セリの開始を告げる鐘が高らかに鳴り響く。リズミカルな身振りと威勢のよい掛け声を繰り出すセリ人に、仲卸業者たちが指で自分の値付けを示す。1本がセリ落とされるまでの時間は、わずか数秒。まさに一期一会の真剣勝負だ。

関連キーワード

トピックス

かつて問題になったジュキヤのYouTube(同氏チャンネルより。現在は削除)
《チャンネル全削除》登録者250万人のYouTuber・ジュキヤ、女児へのわいせつ表現など「性暴力をコンテンツ化」にGoogle日本法人が行なっていた「事前警告」
NEWSポストセブン
主演映画『碁盤斬り』で時代劇に挑戦
【主演映画『碁盤斬り』で武士役】草なぎ剛、“笠”が似合うと自画自賛「江戸時代に生まれていたら、もっと人気が出たんじゃないかな」
女性セブン
水卜麻美アナ
日テレ・水卜麻美アナ、ごぼう抜きの超スピード出世でも防げないフリー転身 年収2億円超えは確実、俳優夫とのすれ違いを回避できるメリットも
NEWSポストセブン
撮影現場で木村拓哉が声を上げた
木村拓哉、ドラマ撮影現場での緊迫事態 行ったり来たりしてスマホで撮影する若者集団に「どうかやめてほしい」と厳しく注意
女性セブン
5月場所
波乱の5月場所初日、向正面に「溜席の着物美人」の姿が! 本人が語った溜席の観戦マナー「正座で背筋を伸ばして見てもらいたい」
NEWSポストセブン
大家志津香
《2024年後半、芸能界は誰がくる?》峯岸みなみに代わり“自虐”でオファー増加の元AKBメンバーなど5人
NEWSポストセブン
遺体に現金を引き出させようとして死体冒涜の罪で親類の女性が起訴された
「ペンをしっかり握って!」遺体に現金を引き出させようとして死体冒涜……親戚の女がブラジルメディアインタビューに「私はモンスターではない」
NEWSポストセブン
氷川きよしの白系私服姿
【全文公開】氷川きよし、“独立金3億円”の再出発「60才になってズンドコは歌いたくない」事務所と考え方にズレ 直撃には「話さないように言われてるの」
女性セブン
被害者の平澤俊乃さん、和久井学容疑者
《新宿タワマン刺殺》「シャンパン連発」上野のキャバクラで働いた被害女性、殺害の1か月前にSNSで意味深発言「今まで男もお金も私を幸せにしなかった」
NEWSポストセブン
NHK次期エースの林田アナ。離婚していたことがわかった
《NHK林田アナの離婚真相》「1泊2980円のネカフェに寝泊まり」元旦那のあだ名は「社長」理想とはかけ離れた夫婦生活「同僚の言葉に涙」
NEWSポストセブン
広末涼子と鳥羽シェフ
【幸せオーラ満開の姿】広末涼子、交際は順調 鳥羽周作シェフの誕生日に子供たちと庶民派中華でパーティー
女性セブン
電撃閉校した愛知
《100万円払って返金は5万円》「新年度を待ったのでは」愛知中央美容専門学校の関係者を直撃、苦学生の味方のはずが……電撃閉校の背景
NEWSポストセブン