ライフ

石田衣良氏「一億総活躍」「有料メルマガを始めた理由」語る

石田さんは読者と直接つながるためにメルマガを始めた

 NEWSポストセブン恒例の直木賞作家・石田衣良氏の年頭インタビュー(続編)をお届けする。2016年はなにか新しいことを始めるラストチャンスの年に。(取材・構成=フリーライター・神田憲行)

 * * *
 2016年の今年は人々の関心のタコ壺化、無関心、格差がまだ続く。ベルリンの壁崩壊以降続くグローバリズムが続いて、そのむき出しの顔が年々少しずつ露わになってきているというのが今の世界なんだな、という気がします。

 安倍政権の支持率が上がっていますが、アベノミクスは日銀に金融緩和させただけがメインで、他に新しいものは出てこないですね。一億総活躍大臣みたいなお笑いが出てきたぐらいで。ああいうネーミングは臭いんですが、新しい保守層は文化的にロウワーなので、臭いわかりやすいネーミングがいいんですよ。都市のインテリ層に食い込む話は要らない。お笑い文化的なものとか、わかりやすいくだけた言葉に政治家も寄り添ってきている気がします。

 2016年はみんなで新しいことに取り組む最後の年になると思います。2017、18年はオリンピック前の谷間の年になると思うので。だいたいオリンピックの前の年にマーケットとか景気がピークを付けることが多いらしいんですよね。だから2019年はオリンピックで盛り上がって、また落ちていく。2017年はその盛り上がり前の谷になるでしょう、消費税も上がるし。その谷の前の2016年は、景気が悪いけれどなにか新しいことを起こすオリンピック前のラストチャンスです。

 私自身でいえば、2015年から有料のメルマガを始めました。これはライブをしているような感覚です。小説家は本の構想を持ってから1年、書くのに1年、紙の本になるのが半年ぐらい。つまり考えを持ってから具体化するまで2年半かかるんです。メルマガだといまさっき起きたテロの話もできるし、読者と人生相談もできる。ひとつ読者とつながれるチャンネルが出来たみたいで面白いですよ。

 まだ会員数はそんなに多くはないんですが、毎月ひとりの読者が払ってくれる購読料の中から私が受け取る金額は、私の文庫本を6冊ぐらい買った印税程度に相当します。つまり会員数が1000人だと毎月文庫が6000冊売れていることになる。会員が2000人なら文庫が毎月1万2000冊売れていることになりますから、普通の作家ならこれだけで食べていける勘定になる。

 私がメルマガを立ち上げたのは、作家と読者の関係がもっと近くにならないいけないという問題意識があったからです。今までの出版社は「良い本」を作ることに熱心ですが、できあがるとあとはせいぜいサイン会を開くぐらい「野となれ山となれ」でした。出しっ放しで、たまたま当たれば「ああ良かったな」という。

 でもAKBを見ていればわかると思うんですが、今は売り方が大事なんですよ。純粋に音楽だとか芸だけ見せて食べていくのは難しい時代です。いろいろ批判もありますが、握手券とかよく考えられていますよね。

 オリンピックの年までの大局観を持ちつつ、新しいことにチャレンジする。2016年はそういう生き方です。

関連キーワード

関連記事

トピックス

“ATSUSHIものまね芸人”として活動するRYO
【渦中のRYOを直撃】「売名じゃない」橋幸夫さん通夜参列で炎上の“ATSUSHIものまね芸人”が明かした「反省」と「今後」…「100:0で僕が悪者になっている」との弁も
NEWSポストセブン
滋賀県を訪問された秋篠宮家の次女・佳子さま(2025年10月7日、撮影/JMPA)
《再販後完売》佳子さま、ブラジルで着用された5万9400円ワンピをお召しに エレガントな絵柄に優しいカラーで”交流”にぴったりな一着
NEWSポストセブン
個別指導塾「スクールIE」の元教室長・石田親一容疑者(共同通信)
《やる気スイッチ講師がわいせつ再逮捕》元同僚が証言、石田親一容疑者が10年前から見せていた“事件の兆候”「お気に入りの女子生徒と連絡先を交換」「担当は女子ばかり」
NEWSポストセブン
真美子さんと大谷が“即帰宅”した理由とは
《ベイビーを連れて観戦》「同僚も驚く即帰宅」真美子さんが奥様会の“お祝い写真”に映らなかった理由…大谷翔平が見計らう“愛娘お披露目のタイミング”
NEWSポストセブン
渡邊渚さんが、「選挙」と「投票」について綴った(撮影/松田忠雄)
渡邊渚さんが綴る“今の政治への思い”「もし支持する政党がパートナーと全く違ったら……」
NEWSポストセブン
子宮体がんだったことを明かしたタレントの山瀬まみ
《山瀬まみが7ヶ月間のリハビリ生活》休養前に目撃した“スタッフに荷物を手伝われるホッソリ姿”…がん手術後に脳梗塞発症でICUに
NEWSポストセブン
自民党屈指の資金力を誇る小泉進次郎氏(時事通信フォト)
《小泉進次郎氏の自民党屈指の資金力》政治献金は少なくても“パーティー”で資金集め パーティーによる総収入は3年間で2億円、利益率は約79%
週刊ポスト
イベントキャンセルが続く米倉涼子
《新情報》イベントのドタキャン続く米倉涼子を支えた恋人の外国人ダンサー、日本を出国して“諸事情により帰国が延期”…国内でのレッスンも急きょキャンセル 知人は「少しでもそばにいてあげて」
NEWSポストセブン
小川晶市長“ホテル通い詰め”騒動はどう決着をつけるのか(左/時事通信フォト)
《前橋・小川市長 は“生粋のお祭り女”》激しい暴れ獅子にアツくなり、だんベぇ踊りで鳴子を打ち…ラブホ通い騒動で市の一大行事「前橋まつり」を無念の欠席か《市民に広がる動揺》
NEWSポストセブン
歴史ある慶應ボート部が無期限で活動休止になったことがわかった(右・Instagramより)
《慶應体育会ボート部が無期限活動休止に》部員に浮上した性行為盗撮疑惑、ヘッドフォン盗難、居酒屋で泥酔大暴れも… ボート部関係者は「風紀は乱れに乱れていた」と証言
NEWSポストセブン
元大関・貴景勝
断髪式で注目の元大関・貴景勝 「湊川部屋」新設に向けて“3つの属性の弟子”が混在する複雑事情 稽古場付きの自宅の隣になぜか伊勢ヶ濱部屋の住居が引っ越してくる奇妙な状況も
NEWSポストセブン
京都を訪問された天皇皇后両陛下(2025年10月4日、撮影/JMPA)
《一枚で雰囲気がガラリ》「目を奪われる」皇后雅子さまの花柄スカーフが話題に 植物園にぴったりの装い
NEWSポストセブン